この戦いは何度も行われ、その度に母は獅子奮迅の活躍を見せた。
その振る舞いは、昨今の急激な技術革新に対する人々の期待と不安、その二つを象徴するようであった。
興味の度合いや好き嫌いはあれど、世間はその活躍に視線を向けざるを得ない。
望むと望まざるに関わらず、母は一躍“時のヒト”となったのである。
だが、この流れが永遠と続くはずもなく、いずれどこかで塞き止められる。
それは母の復讐心が薄れたとかではなく、“無関係だが無関係ではない”箇所が要因だった。
痛快な展開も、こう何回もやられては慣れる。
そして、“慣れ”は“飽き”となる。
これが時代劇とか異世界チートものなら、それでもいいのかもしれない。
ヒトは人の心があるが故に、赤の他人へ向ける“興味の量”が決まっている。
センシティブなお題目で、傍観者の関心を引くのにも限界があるんだ。
そんな幾度も繰り返される戦いが10を超えたあたりで、さすがに観客の熱も冷め切っていた。
「マスダさん、私どもの方からこのような提案をするのは心苦しいのですが、何か別の要求はございませんか」
だが、この頃になると世間の注目度も落ち着き、スポンサーも離れたがっていた。
そんな中で、安くないロボットを作り、その度に破壊されて平然とはいかない。
その額は、初めから莫大な賠償金を払っていた方が遥かにマシ、そう思えるほどだったという。
「私の気が済むまで、そちらの都合は関係なく続けると。正式に契約も交わしましたよね」
「ですが、このままだと我が企業も回らなく……」
「だから、それは“そちらの都合”でしょ」
しかし、母はその申し出を断った。
傍から見れば意固地になっているだけに見えるが、そうではない。
母は、自分をこんな目に遭わせたシックスティーンを許す気はなかった。
その恨みは、機械をサンドバッグに見立てて晴れるようなものではない。
そして直接の原因ではなかったものの、ラボハテ側にも多少の痛みは与えたかった。
そのための一計が、この大掛かりな催しだったのである。
自分を苦しめた企業のクダラナイ催しに、今度は企業自身が苦しむ。
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