2012-12-05

http://anond.hatelabo.jp/20121205193833

まり現在は金余りではなく金足らずの時代であり、それが続くと予想されるからこそ企業家計必死現金や換金性の高い預金国債などの資産を溜め込もうとしている。

なるほど、この言葉元増田との会話の中で出てきたものということを認識しないで現在=たった今この時(少なくとも今年)と字面通りに解釈したのですね。

元増田の言うところの内部留保をどう投資に回すかが問題という時代、あるいは無借金お金を溜め込んでいる企業が増えた状況になっている「今」のことを現在と呼んでいます。つまり、ここ数年くらいという幅のある概念です。

この期間で、何度か(あるいは均衡実質金利概念からして累積でみて)実質金利が均衡実質金利を上回るような状態が引き起こされているということを高どまりと呼んでいます

「適正な金利水準」は「均衡実質金利(自然利子率)」ではないというあなたレスを前提に議論してきましたが、上記引用を読むと「適正な金利水準」を緩和の目安(「実質金利が高どまり」「本来するべき緩和には足りておらず金利が高どまり」)にしています。それは「適正な金利水準」を「均衡実質金利(自然利子率)」扱いしているようにしか見えないのですが。

「適正な金利水準」は「均衡実質金利(自然利子率)」ではない、その通りです。

「適正な金利水準」を(十分な)緩和の目安にしています、その通りです。

ここからなぜ「適正な金利水準」を「均衡実質金利(自然利子率)」扱いしているように見えるのかが分かりません。

実質金利を「均衡実質金利(自然利子率)」より小さくすることは必要条件ですが、それで「適正な金利水準」となることの十分条件を満たすとは限りません。

言い換えれば、「我々がみな死んでしまう」長期に適切なインフレ率・経済環境を達成すれば良いのであれば、実質金利を「均衡実質金利(自然利子率)」より小さくすれば十分ですが、

現実的な期間で適切なインフレ率・経済環境を達成するには、それだけでは不十分であり「適正な金利水準」は別に存在するということです。

混乱を招いたとすれば、ここ数年に(そしておそらく今後数年に)均衡実質金利比較して実質金利が上回っている(上回るだろう)時期・期間があることも、

「適正な金利水準」よりもたった今この時現在の実質金利が上回っていることも、両方を実質金利の高どまりと呼んだことにあるのかもしれません。

どちらも期待インフレ率が低いことによって、ゼロ金利にしてさえ実質金利を十分に下げられないことに起因する事態であるので、どちらも実質金利の高どまりと呼んでいます

どこで指摘されていたのでしょうか。それがサマー効果の肝という事でしょうか。

インフレ率が高いほどバブル抑制するというのは渡辺氏の文章には出て来ません。当然サマー効果とは異なります

渡辺氏の文章は経済危機発生時の緩和余地・糊代を大きくするためにはインフレ率を高めにしておくべきという文脈で引用していたのですが、

高いインフレ率がバブル抑制であるというのもそこに説明されていると誤読されたのでしたら、どこか書き方が悪かったのかもしれません。

高いインフレ率が資産価格高騰を抑制するという話はVuolteenahoらの研究に示されています

簡単に要約すれば、人々はインフレ率が高い時には実質金利がたとえ低くても調達コストリスクフリーレートを高く見積り、株式投資からの純収益が小さくなると見なすため投資をひかえがちになって価格が抑えられるというものです。

より詳しく知りたいならばCampbell and Vuolteenaho(2004)やCohen, Polk, and Vuolteenaho(2005)などを読んでみて下さい。

高めのインフレ率を設定した方が良い、と唱える人がいるのは知っていますしかし、それは一般的な考え方でしょうか。

実際、「適切な」インフレ率ではなく、「高めの」インフレ率を採用している中央銀行があるでしょうか?

現在日本インフレ水準と比較して、あるいは現在目標である1%と比較して高めということなので、(何度も述べていますが)2~3%の目標が望ましいということです。

この程度のインフレ率が望ましいというのは一般的な考え方だと思います。このあたりの水準を目標にしている中央銀行は多いです。

より高い目標をおいておくべきという方向の議論はブランシャールのような高名な方などによってなされています。議論としては一般的になってきたという段階で、まだ結論の大勢は決まってません。

から、「金利ギャップが負(推定)なのに、金利が高止まりと強弁し続けるのは一般的ではないと思いますが続けますか?」と前エントリで確認したのです。

なぜ「だから」でつながるのか意味がよくわかりません。金利ギャップが負なのに金利が高止まりしていることがあるのは強弁でもなければ、よくあることです。

そして、現在日本の状況もそうであると思われます

記事への反応 -
  • うーん。デフレが経済にとって悪いことだと説明してくんない。ただし条件付きで デフレが経済にとって悪いことだと知らない野田首相 まず 1 金融政策の限界 負の金利 2 フィ...

    • フィリップス曲線を出す理由がなく、実質金利と投資活動の関係を見ればよい。 コストである金利負担が大きければ企業にとって設備投資の純利益は低下する、という流れは十分に説得...

      • まず、金利という考え方に疑問。 今は昔と時代が違って、実に40%以上の企業が無借金経営で、金余りの時代による負の金利時代。 欧米でも日本でも、内部留保をどう投資に回すか?...

        • 企業が無借金で金を溜め込んでいても、金利は投資に影響する。 企業は溜め込んだ金をただ現金で寝かしているわけではなく、銀行預金にせよ国債投資にせよ何らかに投資している。 ...

          • う~ん。混乱してきたかな。 . . 前回も少し引っかかったのですが『「今の金利は高い」というあなたの主張』というようなことを一体どこで私はしたのでしょうか? http://anond.hatelabo.j...

            • つまり現在は金余りではなく金足らずの時代であり、それが続くと予想されるからこそ企業や家計は必死に現金や換金性の高い預金・国債などの資産を溜め込もうとしている。 なるほ...

            • つまり現在は金余りではなく金足らずの時代であり、それが続くと予想されるからこそ企業や家計は必死に現金や換金性の高い預金・国債などの資産を溜め込もうとしている。 なるほ...

          • 気がするperfectspellことレフです。 . 均衡実質金利 - 実質金利 = 金利ギャップが 高止まりしている主張かと思いますが、今の金利ギャップは幾つなのでしょうか。 <img src="http://f.hatena.ne.j...

            • 均衡実質金利 - 実質金利 = 金利ギャップ が高止まりしている主張かと思いますが、今の金利ギャップは幾つなのでしょうか。 渡辺(2012) http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2012/data/wp12j03.p...

              • レスども。 今年は2010年ではなく2012年なので、自然利子率が2010年のまま 0%だと仮定しても(↓) http://f.hatena.ne.jp/perfectspell/20121203201658 2012年の今は名目金利0.1%・期待インフレ率0.6%(目分量)で...

                • 引用先の画像に2012年はないようだけどどうやって目分量で見たの?

                • 今年は2010年ではなく2012年なので、自然利子率が2010年のまま 0%だと仮定しても(↓) http://f.hatena.ne.jp/perfectspell/20121203201658 2012年の今は名目金利0.1%・期待インフレ率0.6%(目分量)で 「...

                  • 金利ギャップが負(推定)なのに、金利が高止まりと強弁し続けるのは一般的ではないと思いますが続けますか? 結局「蓋然性が高い」という思い込みで今の金利ギャップは不明だけど、2年...

                    • を混同してるだろこいつ http://anond.hatelabo.jp/20121204113745 実質金利=自然利子率 → 中立 実質金利>自然利子率 → 引締 実質金利<自然利子率 → 緩和 実質金利=テイラールール - ...

                    • 結局「蓋然性が高い」という思い込みで今の金利ギャップは不明だけど、2年前の統計しか用意してないけど、「今の金利は高い」というあなたの主張が始まりなのですが。 前回も少...

                  • 結局「蓋然性が高い」という思い込みで今の金利ギャップは不明だけど、2年前の統計しか用意してないけど、「今の金利は高い」というあなたの主張が始まりなのですが。 前回も少...

                • 消費税の負担は需要の価格弾力性に応じて消費者と企業で分け合う。 消費税増税で消費者物価の予想インフレ率が上がっている時には、 企業の税抜きでの売上単価の予想インフレ率は...

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん