2012-12-02

http://anond.hatelabo.jp/20121201191413

企業が無借金で金を溜め込んでいても、金利投資に影響する。

企業は溜め込んだ金をただ現金で寝かしているわけではなく、銀行預金にせよ国債投資にせよ何らかに投資している。

あくまで、お金を使って設備投資した場合収益お金を預けて利息をもらった場合収益のどちらが得かを比較して、前者が得になる分だけの設備投資を行う。

実質金利が高どまりして、銀行預金国債投資利益が相対的に高まっている時には、設備投資は少なくなる*1。

このように金利企業投資行動に影響するということは、金余りの時代だろうがなかろうが関係がなく成立する。

言い換えれば、溜め込んだ金からの調達にしてもコストゼロではない(その分を国債などで運用すれば得られた金利収入を諦めるという機会費用が掛かっている)ということ。

だいいち、インフレを起点として利益が2%増えたとしても、通貨価値が2%下がっているので、それは利益ではない。数字マジック

以下の部分は、実質金利の影響について考えている考察においては無関係。すべてインフレを調整した上での話。

インフレで調節した実質金利が、デフレの時には高どまりしてしまうという議論であることを確認して欲しい。

特にインフレによる(額面での)利益の増加ではなく、実質金利の低下によるコスト減での利益の増加の話であることを理解して欲しい。

先進国殆どデフレ化しているという事を考えると

ただの事実誤認。一時的な物価の落ち込みを除き、先進国デフレが起きているのは日本だけである

名目金利が負になれないという制約から実質金利が高どまるという問題を解決するのに必要インフレ率は先進国でも2%程度あれば十分。

日本以外の先進国は概ね平均的にこの水準のインフレを達成しており、デフレ化などしていない。

なお、本当に金余りの時代が続いているのであるならば、余っているお金価値は低くなっていっているはずでありデフレにはならない。

デフレというのは人々の求めるお金に対してお金の量が足りない状況が続くと思われていることを表している。余る余らないは、あくまで需要供給の相対関係なのだ

まり現在は金余りではなく金足らずの時代であり、それが続くと予想されるからこそ企業家計必死現金や換金性の高い預金国債などの資産を溜め込もうとしている。

追記

80年代から比べると実質金利は下がっているので高どまりしていないというコメントを頂いたが、均衡実質金利経済の需給を均衡させる実質金利)と比べて実質金利が高いままになるという意味

高どまりという言葉を使っている。80年代のように均衡実質金利が高い時代には実質金利は高くてもそれで経済の需給は均衡する。

一方で、現在のように均衡実質金利が低くなっている時には80年代より低い実質金利でも経済の需給を均衡させるには高過ぎるということになり、投資抑制される。これが高どまり

均衡実質金利が-1%を下回ることが頻発している*2現在、最低でも1%のインフレ期待がなければ名目金利ゼロであってさえ実質金利が均衡実質金利を上回る事態が頻発する。

均衡実質金利が-2%を下回ることも数度あるので、余裕を見て2~3%のインフレ期待があることが望ましい。

追記2

銀行に対しての融資相談のもの現在でも多くある。決して企業の事業投資案件自体が少ないわけではない。お金の量が足りない状況が続くと思われているから、

企業は事業投資に回すよりも現金や換金性の高い預金国債などの資産を溜め込むことを優先し、銀行側も融資という資産ではなく換金性の高い資産を保有することを優先している。

これは金足らずの状態。



註1:デフレが深刻な場合には、金利の付かない現金当座預金という形で持っていてさえ、デフレ現金実質的価値が増えるという予想が強まれば設備投資が少なくなる可能性がある。

註2:http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2012/data/wp12j03.pdf

記事への反応 -
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    • うーん。デフレが経済にとって悪いことだと説明してくんない。ただし条件付きで デフレが経済にとって悪いことだと知らない野田首相 まず 1 金融政策の限界 負の金利 2 フィ...

      • フィリップス曲線を出す理由がなく、実質金利と投資活動の関係を見ればよい。 コストである金利負担が大きければ企業にとって設備投資の純利益は低下する、という流れは十分に説得...

        • まず、金利という考え方に疑問。 今は昔と時代が違って、実に40%以上の企業が無借金経営で、金余りの時代による負の金利時代。 欧米でも日本でも、内部留保をどう投資に回すか?...

          • 企業が無借金で金を溜め込んでいても、金利は投資に影響する。 企業は溜め込んだ金をただ現金で寝かしているわけではなく、銀行預金にせよ国債投資にせよ何らかに投資している。 ...

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                • レスども。 今年は2010年ではなく2012年なので、自然利子率が2010年のまま 0%だと仮定しても(↓) http://f.hatena.ne.jp/perfectspell/20121203201658 2012年の今は名目金利0.1%・期待インフレ率0.6%(目分量)で...

                  • 引用先の画像に2012年はないようだけどどうやって目分量で見たの?

                  • 今年は2010年ではなく2012年なので、自然利子率が2010年のまま 0%だと仮定しても(↓) http://f.hatena.ne.jp/perfectspell/20121203201658 2012年の今は名目金利0.1%・期待インフレ率0.6%(目分量)で 「...

                    • 金利ギャップが負(推定)なのに、金利が高止まりと強弁し続けるのは一般的ではないと思いますが続けますか? 結局「蓋然性が高い」という思い込みで今の金利ギャップは不明だけど、2年...

                      • を混同してるだろこいつ http://anond.hatelabo.jp/20121204113745 実質金利=自然利子率 → 中立 実質金利>自然利子率 → 引締 実質金利<自然利子率 → 緩和 実質金利=テイラールール - ...

                      • 結局「蓋然性が高い」という思い込みで今の金利ギャップは不明だけど、2年前の統計しか用意してないけど、「今の金利は高い」というあなたの主張が始まりなのですが。 前回も少...

                    • 結局「蓋然性が高い」という思い込みで今の金利ギャップは不明だけど、2年前の統計しか用意してないけど、「今の金利は高い」というあなたの主張が始まりなのですが。 前回も少...

                  • 消費税の負担は需要の価格弾力性に応じて消費者と企業で分け合う。 消費税増税で消費者物価の予想インフレ率が上がっている時には、 企業の税抜きでの売上単価の予想インフレ率は...

            • う~ん。混乱してきたかな。 . . 前回も少し引っかかったのですが『「今の金利は高い」というあなたの主張』というようなことを一体どこで私はしたのでしょうか? http://anond.hatelabo.j...

              • つまり現在は金余りではなく金足らずの時代であり、それが続くと予想されるからこそ企業や家計は必死に現金や換金性の高い預金・国債などの資産を溜め込もうとしている。 なるほ...

              • つまり現在は金余りではなく金足らずの時代であり、それが続くと予想されるからこそ企業や家計は必死に現金や換金性の高い預金・国債などの資産を溜め込もうとしている。 なるほ...

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