2024-08-27

箕面の滝道に住む

大学生3年のとき下宿引越しをする必要があって、部屋探しをした

最初に住んでいた下宿は、決めるころには受験真っ盛りで部屋探しなんかやってられないから、両親に決めてもらったテキトー大学近くのアパートだった

大学のある町に2年住んで、ある程度土地勘がついた状態で部屋探しを自分でするのは実際けっこうやりがいがあった

そんな中で見つけたのが、箕面の滝っていうそこそこ有名な山奥の滝に向かう道沿いにある、ボロいけど3部屋ある畳張りの下宿だった

正直痺れた

徒歩圏内ホント徒歩2分くらいのところに無料足湯があって、家から30分も歩けば箕面大滝にいけるところだった

広くて、2階で、家賃も安かった

いっぽうで明らかにボロく、スーパーどころかコンビニも近くになく、交通の便が致命的に悪くて、家の前の人通りが多そうだった

結局、キャンパス近くの別のアパートに俺は住んだ

しかし、ときどきやっぱ滝道に住んでおいたらよかったかなあと思うことがある

実際不便だっただろうけど、誇りをもって暮らせたかもなと思う

夜中に起き出して箕面の滝まで歩いたりしたかもしれない 箕面昆虫館に通ったかもしれない

阪急箕面線に頻繁に乗ることになっただろう

そのままだと不便すぎるから原付免許をとったか

原付に乗ったら存外便利で、彼女にも勧めたりしたかもしれない あるいは、交通の便が不便すぎて不仲になり、交際は続かなかったかも…ってことはないな

とにかく、間違いなく箕面の滝アパートは"攻め"の選択肢で、俺はあのとき"守り"に入った

リーズナブルに、理性的に生きていこうと思って選択を重ねていって、あとから「あのときは守りに入ったなあ…」と思うことが多い

それを嫌って、俺は9万円の居合刀を買ったのかもしれない

キナリ9万円の居合刀を買ったのは間違いなく"攻め"だったと思う

居合刀は美しい 毎日手に取ってしげしげ眺める 刀というもの解像度が上がっていく

箕面の滝道に住んでいた場合の俺は、その5〜6年後に刀を買うことはなかったかもしれない

俺はこの刀で、箕面の滝アパートの幻影を斬り伏せないといけないのかもしれない

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