2024-08-04

[] 厚生経済学の基本定理証明

厚生経済学の第1基本定理証明

定理:完全競争市場において、以下の条件下で競争均衡はパレート効率である

1. 消費者の選好が局所非飽和的

2. 全ての財の価格が正

証明

1. 経済を (X_i, Y_j, ω_i)_{i∈I, j∈J} と定義する。ここで、

- I は消費者の集合、J は企業の集合

- X_i ⊆ R^L は消費者 i の消費可能集合

- Y_j ⊆ R^L は企業 j の生産可能性集合

- ω_i ∈ R^L は消費者 i の初期保有

2. 競争均衡 (x*, y*, p*) を考える。ここで、

- x* = (x*_i)_{i∈I} は均衡消費配分

- y* = (y*_j)_{j∈J} は均衡生産計画

- p* ∈ R^L_++ は均衡価格ベクトル

3. 背理法を用いる。(x*, y*) がパレート効率的でないと仮定する。

4. すると、パレート優位な別の実行可能配分 (x', y') が存在する。つまり

∀i ∈ I, u_i(x'_i) ≥ u_i(x*_i) かつ ∃k ∈ I, u_k(x'_k) > u_k(x*_k)

5. 局所非飽和性により、∀i ∈ I, p* · x'_i ≥ p* · x*_i

さらに、k に対しては p* · x'_k > p* · x*_k

6. これらを合計すると:

Σ_{i∈I} p* · x'_i > Σ_{i∈I} p* · x*_i

7. 競争均衡の定義より、∀i ∈ I, p* · x*_i = p* · ω_i + Σ_{j∈J} θ_ij p* · y*_j

ここで、θ_ij は消費者 i の企業 j に対する利潤シェア

8. これを合計すると:

Σ_{i∈I} p* · x*_i = p* · Σ_{i∈I} ω_i + p* · Σ_{j∈J} y*_j

9. 企業利潤最大化より、∀j ∈ J, p* · y*_j ≥ p* · y'_j

10. これらを合計すると:

p* · Σ_{j∈J} y*_j ≥ p* · Σ_{j∈J} y'_j

11. 6, 8, 10 より:

p* · Σ_{i∈I} x'_i > p* · Σ_{i∈I} ω_i + p* · Σ_{j∈J} y'_j

12. これは (x', y') が実行可能であるという仮定矛盾する。

実行可能性は Σ_{i∈I} x'_i = Σ_{i∈I} ω_i + Σ_{j∈J} y'_j を意味するため。

よって、競争均衡はパレート効率的でなければならない。

厚生経済学の第2基本定理証明

定理:以下の条件下で、任意パレート効率的配分は適切な富の再分配を伴う競争均衡として実現可能である

1. 全ての消費者の選好が凸で連続

2. 全ての企業生産可能性集合が凸

3. 局所非飽和性

証明

1. パレート効率的配分 (x*, y*) を考える。

2. 集合 Z を以下のように定義する:

Z = {z ∈ R^L | z = Σ_{i∈I} (x_i - x*_i) - Σ_{j∈J} (y_j - y*_j),

∀i ∈ I, x_i ∈ X_i かつ u_i(x_i) ≥ u_i(x*_i),

∀j ∈ J, y_j ∈ Y_j}

3. Z の凸性を示す(省略:仮定1,2より導出可能)。

4. 0 ∉ int(Z) を示す:

もし 0 ∈ int(Z) ならば、(x*, y*) はパレート効率的でない。

5. 分離超平面定理適用

∃p* ∈ R^L \ {0}, ∀z ∈ Z, p* · z ≥ 0

6. p* > 0 を示す(局所非飽和性を用いる)。

7. 各消費者 i に対して、富 w_i = p* · x*_i を割り当てる。

8. 消費者効用最大化問題を考える:

max u_i(x_i) s.t. p* · x_i ≤ w_i

9. x*_i がこの問題の解であることを示す:

反証法を用いる。∃x'_i ∈ X_i s.t. u_i(x'_i) > u_i(x*_i) かつ p* · x'_i ≤ w_i と仮定

すると、z = x'_i - x*_i ∈ Z だが、p* · z < 0 となり、5に矛盾

10. 企業利潤最大化問題を考える:

max p* · y_j s.t. y_j ∈ Y_j

11. y*_j がこの問題の解であることを示す:

反証法を用いる。∃y'_j ∈ Y_j s.t. p* · y'_j > p* · y*_j と仮定

すると、z = y*_j - y'_j ∈ Z だが、p* · z < 0 となり、5に矛盾

12. 市場清算条件を確認

Σ_{i∈I} x*_i = Σ_{j∈J} y*_j + Σ_{i∈I} ω_i

これは (x*, y*) の実行可能から自動的に満たされる。

以上により、(x*, y*, p*) が競争均衡を構成することが示された。

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