大傑作だった。
岡崎京子といえばサブカル漫画業界の重鎮で、彼女の作品を読んでいない者はモグリとさえ称された。
それでも私は彼女の代表作と呼べる『リバーズ・エッジ』を読んだことがなかった。
別に逆張りをしていたわけじゃない。ただなんとなく読む機会がなかったのだ。
最高だった。大傑作だった。批評家の大言壮語だろと思ってたのは違ってた。ぜんぶほんとだった。凄いマンガだった。
確かにこれを読んでないのに漫画を語るのは馬鹿らしく思えるほどに、完成された作品だった。
私はこれまでに『リバーズ・エッジ』を読まなかったことを後悔したほどだ。
陽キャにも陰の部分が含まれている。そんなちゃちな表現じゃなくて、普遍的な、人間としてだれもが共通して抱いている悩みや葛藤なんかを映し出していた。
まさに鏡ような作品だった。
正直登場人物には全然共感できなかった。いや、できていなかったのではなくて否定したかったのかもしれない。
だから読んでいるときは「ふ~ん」なぐらいにしか思わなかった。気がついたら夢中で最後まで読んでいた癖に。
そうして読み終わっても感想は「ふ~ん」で、でもその時視界がぼやけてあれ?って思って、それから少しずつ涙が溢れた。
よく分からないまま感情を揺さぶられ、理由の分からない涙ほど気味が悪い物はない。でももっと気味が悪いのは、それが決して悪い気分でもないことだった。
”ざけんじゃねえよ いいかげんにしろ あたしにも無いけど あんたらにも 逃げ道ないぞ ザマアミロって”
私は泣いていた。ただただ泣き続けていた。