自分の好きな物が世に出てから何年経っても何十年経っても叩かれ続ける事が嫌だった
毎日毎日、何月でも何年でも叩き続けて馬鹿じゃねえか頭の病気かよこいつらと思っていた
憎悪には総量があって、それを全部吐き出せば普通は叩こうなんて思わなくなるだろ?とも思っていた。何年か前までは
厳密に言うと、以前から嫌いだった物に関係する物というのが正しいかもしれない
流石に時間が経てば依然嫌いだった物も自然と好きになっているかもしれないとほんの少し思っていたけど、全くそんな事は無かった
結局以前と変わらない不快感を嫌いな物とそのファンに対して現在進行形で抱く事になった
とにかく「それ」の事が嫌いで不愉快で仕方ない。「それ」が人気を博している事も、「それ」のファンが鼻高々にしている事も何もかも気に障った
嫌いで嫌いで仕方ないのに、大人気故「それ」を嫌っている人間が少なく、悪口や愚痴を吐き出す事さえままならない。こんなにも自分にとって不愉快なのに
ある日、たまたま都合が良かったのか「それ」に対する不満を思い切り吐き出す事が出来た。自分と同じように「それ」を不満に思っている人の存在も少数ながら確認できた
凄く、スカッとした
まるで長い間我慢していたおしっこをトイレで思い切り出せた時のような…とにかく堪らない…とても良い気持ち良さだった
それまで負の感情として溜め込んでいた自分の中のマイナスをある程度返済出来たような、そんな爽快感があった
勿論そんな快感はその瞬間だけだし、その嫌いな物が消える訳ではないから不快感はまた何度も溜まる訳だけど…
この、ある程度我慢を重ねて一気に負の感情を吐き出すのがこんなに気持ちの良い事だと、それまで好きな物を叩かれる側だと思っていた自分には自覚が無かった
好きな物について思い切り語るのが楽しく気持ち良いように、嫌いな物について思い切り語るのも楽しく気持ちの良い物なのだ
こんな快感があると知った以上、こんなスッキリと出来る行為がこの世から消えるなんて事は有り得ないだろうな、と今では思う
嫌いな物なんて幾らでもある世の中だし、それに対する不満を吐き出せず溜まれば溜まるほど憎しみを吐き出した時に気持ち良くなるんだし
抑圧を笑うためにお笑いというものがあるよ