高校のとき、一個下の、話したこともなければ顔すら見たことない人が、急な発作で死んだことがあった
べつに特別顔が広かったり生徒会長だったりするわけでもない、普通にバレー部か何かに所属していて、普通に同学年の友達と仲良くしているような人だった、らしい
学校が同じとはいえ顔も知らねえ、声も知らねえ、名前も知らねえ、完全に他人と言っていい
同じ部活の人なんかはまた話が違うんだろうけど、クラスの大部分にとってはまあどうでもいい、知らん人だった
でも、朝、訃報を担任が伝えたときから明らかに空気がヤバかった
休み時間、いつもはうるさいのに、なぜかみんな囁くような声で話したり黙ったりで、妙に静かだった
生前(生前!)親交があったらしい女子が集まって、泣いてんのかなんなのかわかんないが、人だかりを構成しているのを遠目に見て、なにもコメントできないので、俺は黙っていた
昼休みが終わって掃除の時間、俺はそのとき花壇の草取り係だったので、ペアのやつと一緒に外に出た
よく晴れていて、車の通る音なんかも聞こえるんで、教室よりはずいぶん開放感があったし、周りに人があんまりいなかったので、ようやく異様な重苦しさから解放された感じがした
ペアのやつが、ひきつった笑いを浮かべて「今日の雰囲気ヤバすぎるだろ!」と言ってきたのに深く同意したあと、「お前なんとかしろって〜!」なんて言い合って、すこしでも気を紛らわせようとした
あれはなんというか、すごかったな
あれが「喪」なのかもしれないな、と思う