夕方五時に出勤して六時半頃までは、やっぱ今日は来客数多いなーというくらいで、特にトラブルもなかった。ところが七時少し前に急に客足が途絶えた。しかも、ふと気づけば、五分以上出入り口のドアが開けっ放しのままだ。あっれー、いつの間に? と思いつつ、Aさんに「自動ドアが閉じなくなっちゃったんで、ちょっとみてもらえますか?」と頼んだ。自動ドアをロックするボタンは私には手の届かない高所にあるからだ。
Aさんは自動ドアを調べ、自動ドアのロックボタンを調べ、首を傾げながらレジカウンターに戻って来た。
「なんともなってないですね」
自動ドアにはロックがかかっていないのに、ドアのセンサーの前にAさんが立ってみても動かなかったのだ。
そこで、Aさんは事務所内にあるコントロールパネルを見に行った。しばらくしてAさんは戻ってきて言った。
「自動ドアの動きを制限するスイッチが入ってました。これがONになってるとドアは閉じたままで外から人は入ってこれなくなるんですが、店内側のセンサーに反応があればドアが開くはずなんですね」
えっいや……私らが出勤してしばらくは普通に自動ドアは動いてたじゃん。しかもさっきまで、ドアは閉じっぱなしになってたんじゃなくて、開きっぱなしになってたんじゃん? どういうことなの……?
Aさんがコントロールパネルのスイッチをもとに戻したところ、なんだか店の雰囲気が急に変わった。その前は、照明は普通に点いているのになんか暗く、有線放送も流れているのに異様に静かだったのだ。自動ドアは何事もなかったかのように、しずしずと閉じた。すると、急にまたお客様が次々と来店し、店の中が活気づいた。自動ドアも普通に開閉している。なんだか、狐につままれた気分。
後でAさんから聞いた話なのだが、先週、Aさんが午前一時くらいまで残業して帰ろうとしたとき、なにもないのに突然、お菓子の棚からお菓子の袋がバサバサバサッと落下したそうだ。落ちたお菓子は、別に触ったり地震が起きたわけでもないのに落ちるような、バランスの悪い形状のものではなかった。だからAさんは「変だな」と思ったらしいのだが、まあいいかと思って片付けもせずに店を閉めて帰ったのだそうだ。
そして、Aさんが帰ってからしばらく経ち、午前四時。店は開店前で誰もいなかったはずなのだが、店内の赤外線センサーに反応があり、警報を受けた警備会社の人が店にやって来たが、調べてもなにもなかったという。だから警備会社の人は帰り、オーナーに報告だけしたそうだ。