好きだった人に振られただけのつまらない話
友達の友達で、たまたま引っ越した先が近かったから二人で飲みに行ったのが始まりだった。友達が多くて頻繁に飲み歩いてるのに、ちゃんと喋ると暗くてネガティブなところがなんか好きだった。それから頻繁に飲みに行くようになった。セックスもしたし旅行もした。ご飯を作って待っててくれることもあった。こちらが作ったご飯を美味しい美味しいって食べるのが可愛かった。酔っ払ってふにゃふにゃな顔で帰ってくるのが愛おしかった。
誰かと付き合いたい、恋人を作りたいという気持ちはなかった。面倒だし、好きだったらただ一緒にいたらいいし、行動を制限する権利なんてほしくなかった。見せびらかしたいとも思わなかった。でもいつからか、関係に名前をつけたくなってしまった。(正しくは、いわゆるセフレという名前がつくんだと思うけど
……)
お互い、好きだと言い合うことがあった。それで満足していた。名前がほしくなったら終わりだとわかっていた。きっと好きだけど付き合う気は無いという答えは今まで話した中で見えていた。
今まで通りでよかった。会いたいときに会って、会わないときは会わないで自分の時間を過ごす。それだけでよかった。でも、それがなんの予告もなく終わってしまうことだけが怖かった。今まで通りを続ける努力をしてみたくなってしまった。
そう思ったら、好きだから付き合ってほしいと言わずにいられなくなった。断られるのはわかっていたつもりだけど、どこかで少しだけ期待していた。
付き合ったらいつか終わりが来るだとか手に入れてしまったら上手くいかなくなるだとか、そんなことは数ヶ月前の自分が言ったことだった。確かにそう思っていたし、今でも絶対にそうならないなんてとても言い切れない。
それでも二人でこのままでいようとしたかった。
都合のいい存在にしようとしたのはお互い様だった。好きだったのは嘘じゃないと思う。話していたからそれだけはわかる。ただ、あの人の中の生き方とかを変えるまでの好きじゃなかっただけだ。