久しぶりに「てりやきマックバーガーセット」が食べたくなってマックに行くと、ちょうどお昼時なので店の入り口前に行列ができている。この炎天下の中、直射日光に当たりながら並ぶのはきついな、と思ったけど、頑張って待った後に、氷でキンキンに冷えたコーラを流し込みながらエアコンの効いた店内で一息つくときの快感を思い出して、列の最後尾についた。
とはいえ、やはり暑い。アスファルトからの照り返しで地面から上がってきた熱が頬を嫌な感じになでる。ソーシャルディスタンスをそれとなく保った列は、じり、じりとしか進まない。
ようやく、直射日光が当たる外から、入り口を通過して店の中まで列が進んだところで「すいません」と後ろから女性の声がする。振り返ると、髪をところどころハワイアンブルーに染め、°MEGADEATHというロゴの入った黒のTシャツ姿の女性が立っている。
「あの、セミ」
女性が私の肩を指さしているので、首を傾けて見ると、右肩の、背中のほうに大きな蝉がとまっている。
ここで蝉を払い落とそうとすれば、セミは店内で飛び回る。
何気ない顔をして列に入ったまま前進し、「てりやきマックバーガーセット」をゲットするまで、蝉が飛び立たぬよう、ひたすら願うという選択肢もある。
だが、いつ蝉が飛び立ち、満員の店内を恐慌に陥れるかわからない。
なすすべなく、列から離脱して店の外に出たところで、蝉はジ、ジ、と鳴いて飛び立った。
あらゆるものを瞬時に失ったという気持ちがやってくる。昼時の、カリッカリにできたてのポテト、身体に染みわたる冷たいコーラ、照り焼きソースに包まれたジューシーなバーガー。もう一度列の最後尾に並びなおして注文するには、日の光は強すぎ、行列は長すぎた。
エアコンの効いた店内から出たせいでよけいに暑さを感じながら商店街を歩く。定食屋の前に「じゃんぎ丼はじめました」という看板が置いてある。もうなんでもいいと思って店内に入り、じゃんぎ丼とかいうのを注文すると、から揚げと野菜を甘辛く炒めなおした丼ものがカウンターに出される。早い。ちょっと甘いかなと思ったが、直射日光に当たり続けて疲れ切った身体に、濃い味の食べ物がうまかった。また機会があったら注文しようと思う。
オメガラーメンはもうあきらめたのか
思いやりがいいねえ。夏のひとときの快感は失ったかもしれないが、人として大切な何かを持ってるってことは明らかになったね。
てりマ文学
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