目前に何人かのお笑い界の大物が並んでいる。誰が好きか選べと言われた。その人が師匠だと。
俺が誰を選ぶのか皆が注目してる。最悪の時間。大物たちの目が俺に突き刺さる。張り詰めた部屋の空気。
それから逃げるように俺は目の前にいた芸人に声をかけた。木梨憲武さんだ。彼は「俺を選ぶの変わってるね〜」と嫌味っぽく言った。でも、口元が少し笑っていた。それを見て「嫌いじゃないな」って思った。
それから毎日カバン持ちの日々。木梨さんはスーパースターなので顔も広い。事務所、スタジオ、友達の家、高級レストラン、所構わずに顔を出す。俺は知らない空間に行くのが苦手だし、コミュ障だしで常に冷や汗をかいて伏し目がちにしてた。他の先輩芸人さんにいじって貰っても声が出ない。たまに先輩に怒られ、惨めな気分になる。
そんな俺に何も言わない木梨さん。
でもいつか「コミュニケーション能力磨けよ」って怒られると思って、その瞬間を想像するだけで脂汗が出てきた。
ある日、木梨さんの車を運転してると「渋谷に行け」と言われた。
少し張り詰めた空気を出してる師匠をミラー越しにチラ見して震えた。
渋谷に着くと「運転交代しろ」と言われ、そのままセンター交差点で降ろされた。
「ナンパしてこい。電話番号10件手に入れるまで絶対に戻るな」
と言われる。
ああ、なんかの試験だ。これで失敗したら俺はクビだ。という強い直感。
木梨さんの車はすぐにどこかへ消えた。
立ち竦みそうになる。ナンパなんてしたことない。怖い怖い逃げたい。
いや、ビビったらダメだ。ここで地蔵になった分動けなくなる。動かなければ動かないほど緊張する。そう思い誰から構わず声をかけた。
罵声覚悟で。でも、意外と必死に喋る俺を女の子は優しく迎えてくれた。必死さが良かったのかもしれない。とにかく拝むように番号をねだる俺に女の子は優しかった。
わりとすぐに電話番号を10件手に入れた俺は今までと変わった自分を手に入れた気分になった。
女の子と話せた! 知らない人とも緊張せずに話せるようになった!
喜んでいると視界に木梨さんの車が映った。
あれ見てたのかな?
俺が近づくと木梨さんはニヤッと笑って、逃げるように車を発進した。
ちょっと乗せてくださいよ!
キングオブコメディの今野君が先輩芸人を路上で巻くって遊びしてたって昔言ってたな
ノリさん、優しいんだな。 ってホラーかな?
俺の生存バイアスなんだけど、昔の師弟関係は人間を磨くのに本当に役立ってたと思う。 有無を言わさずに何かをやらされる経験ってうまく転べば絶対良い
リアル木梨憲武はかなり性格悪いぞ
なんだよ面白くなくて性格も悪いのかよ
めちゃ面白いやろ 世代間格差かな?
1ミリも面白さを感じたことないなあ。 とんねるず自体が無理だし。
ノリさん、いいよな 俺は銀座で焼肉奢って貰った。嘘だけど