私は疾患と戦っている。
私は医療に従事する人間として、新薬を武器に疾患と戦っている。
私はこれまでに、疾患をものともせず優れた才能を活かし、集団に対して影響力を発揮する人々を見てきた。
私は健康で大型で高性能な身体をもって生まれたが、もし彼らに勝るような才覚を自らに見出していないし、これからもきっとないだろう。
だからこそ私は彼らを尊敬する。疾患によって金銭的にも、物理的にも制約があっていても、彼らの精神性は私のそれよりもはるか誇り高く、清廉で、美しい。
彼らは私に、「良く生きる、美しく生きるとはこういうことだ」というのを見せてくれた。
くだらない人間関係にとらわれて、毎日マジョリティからはみ出すことを恐れていた私に、彼らは勇気をもたらした。
私は彼らに恩を返したいと、勝手にそう思って自らの人生の舵を切った。
大学では全く医療と関係のない研究をしていたにも関わらず、私は今、医薬品の開発をして日々の糧を得ている。
この職を得るために血反吐を吐き、無理に無理を重ねて今のポジションへたどり着いた。
苦しい道のりではあったし、途中で心身を壊しかけて休んだりもした。
それでも、今の私は、この進路をとってよかったと心から感じている。
私の愛する彼ら彼女らはもう身近にはいないが、私は今、自らの職に誇りを感じながら、世界のだれかの疾患を癒す医薬を作り続けている。
彼らのおかげで、怠惰で無味無臭だった私の人生は誇りを得ることができた。本当にありがたい気持ちである。
今、彼らは幸福でいてくれるだろうか?
きっとそうであることを私は祈る。それを祈ってやまない。
彼らと同じような、疾患に苦しむ美しい人々に、私はこれからも貢献し続ける。