2018-12-28

[] #67-1「つまんねえ年末回文)」

12月も終わりを迎えようとしている。

新年を迎えようとしている、と言い換えてもいい。

この時期になると、多くの人々はその新年を歓迎する準備に入る。

日が過ぎることに無理やり特別意味を持たせなくてもいいだろうに。

年号が変わるから何だというのか。

一方的ハッピー扱いされるニューイヤーくんもいい迷惑だろう。

だが社会とは大なり小なり、望むと望まざるにかかわらず、そういったものに順応したほうが楽な時もある。


新年が迫る日、俺たちは自分の部屋の大掃除をしていた。

別にしたくてやってるわけじゃない。

俺たちは大掃除年末にやる必要性など感じていないし。

だが、そう声高に主張しても意味がないんだ。

両親の「じゃあ、いつやるの?」という質問にマトモな答えを返せないのだから

こうして毎年、年末にやらなくてもいい大掃除を、「年末から」という理由でやる羽目になるわけだ。

「なあ兄貴、こんなん出てきたけど」

「俺はそんなの知らないぞ。今まで知らなくても過ごせたんだから、あってもなくてもいいものだろ。捨てるの一択

「えー、でも失ってから初めて気づく大切さってあるじゃん

「失わなきゃ分からない時点で大したことねーよ」

からやる気がなかったものから大掃除の進みは非常に遅い。

8割ほど綺麗になったときには、新年まで数時間前という状況だった。

まあ、その残り2割は弟の箇所だけで、その弟の集中力は切れかけていたが。

「暇だからテレビつけていい?」

ダメだ、気が散る」

テレビなんて流したら、掃除の進みが遅くなるどころか止まるに決まっている。

「えー、もうすぐ『魔法使いじゃありませんわよ!』の放送なのにぃ」

ここで俺が手伝ってやれば早く終わるだろうが、それでは教育上よくない。

とはいえ俺は長男

精神面でのサポートくらいはしてやるべきか。

「仕方ないな。テレビをつけてやる」

「やったぜ、兄貴!」

『さあ今年も、年末風物詩アカハク歌戦争の開始を告げまする~!』

「……チャンネル違うんだけど」

「“テレビをつけてやる”と言っただけだぞ、俺は」

歌番組とか興味ね~よ~」

実のところ俺もあまり興味のない番組だが、これも弟のためだ。

こうやってプレッシャーを与えれば、やる気も出てくるだろう。

「嫌ならさっさと掃除を終わらせるんだな」

「チクショー」

『では第一線、アカチームの出陣!』

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