さいごに見たあなたの姿は、地元のターミナル駅から北へ向かう下りホームへ向かう階段を降りていくところだった。
あなたの住まいはその列車の終着駅で、今住んでいるところでも、通勤で使う大ターミナルでも私はその駅の名前を目にする。
「全く行ったことのないところでも、終点の駅の名前は人の記憶に残る」なんて誰かが言っていた。
高校三年が終わる春の夜、部活のお別れ会が終わって名残惜しく改札で話をしていた。私が高校二年のときに思いを告げてからあなたとは会話をすることがなくなった。女ばかりの部活のなかであなたは複数の女子から恋心を寄せられていた。あるときあなたは、「おまえのことを好いてる人がいるんだって」と部員の1人から告げられると顔を真っ赤にして部屋から出ていき、少しして戻ってきて「僕は誰かから想われたことがないから照れる」なんて言ったらしい。
23歳になり、もう6年も前のことになるのに私が告白したあの日のあなたの困った顔が思い起こされる。「好き」と言われて嬉しい相手じゃなくてごめん。私からの好意は気持ち悪かったんだろうな。私も私で、好きという気持ちはうずたかく、しかし自分に自信がなかったし「付き合ってください」という発想には至らなかった。ただ「好きです」と伝えただけ、そしてあなたはストイックできっと女性にそんなに興味がない。
下世話な話だが、彼は自慰をするのだろうか。声変わりはしていた、と思う。ああ、もう最後に会話して4年以上も経ってる。もう声も思い出せない。あんなに大好きだったのに。全く声を思い出せないことがいたく寂しい。人を忘れるときは声から忘れていくって本当だったんだな。女性に対してそれほど興味がない様子だったが、大学に入って彼女とかできたのだろうか。まだ童貞なのだろうか。理知的で文化と歴史を愛するあの人のことを、その終着駅の名前が想起させ忘れさせてくれない。
電車やバスの行き先表示でよく見るのだから、記憶に残って当然
読ませる増田