こんばんは、イシモチです。正確にはイシモチでした。捕獲されシメられてその生を終えました。魚介類全般の味の良さを褒めて下さりありがとうございます。ところで私には小骨がたくさんあるので気をつけてくださいね。おすすめは塩焼きで、旬は今です。
さて、シメるとか殺られるとか、海はそんな切った張ったの世界から縁遠い雄大な世界ではありますが、とはいえ、私もたくさんの貝やエビカニイワシを追いかけて育ちました。それはもう本能と言うしかなく、食べたいと欲したから体を動かすのではなく、目に入った瞬間に口が飛び出し、一瞬で全て終わっているという具合でした。大きなイカなどは抵抗の末、ちぎれた体で沈むように逃げて行く様子を見かけましたが、それを憐れんだことはありません。ましてや、一瞬で胃袋に収まり消えた小魚のことなど意識にも残りませんでした。何しろ海には私に食べられるべき多くの生き物がいましたし、その序列は変わりようがないのです。
一方で、その序列は私にも当てはまり、サメや大きなカンパチなどが現れた場合、彼らの目に入りたくないと必死で隠れたものでした。これもまた、相手の姿を認めてから逃げ出すのではなく、存在するのではないか?、と感じた瞬間にまず思い切りヒレの向きが変わるのです。群れの誰かがヒレで水を切った振動だけで、全員が一斉に逃げ出すことができるほどの俊敏さでした。自分の身体知がどのようにして襲うべき相手と逃げるべき相手を分けていたのか、今では不思議でなりません。とにかく生きて動いている間、私は、まず体が動き、追って頭が理解する、の繰り返しだったのです。
最初にお伝えしたとおり、私は今死んでおります。スーパーの魚売り場でトレイに入り、近づいてくる人の顔を興味深く拝見しています。ラップで密閉されたこの空間は無音すぎて、ジーンという音が聞こえるような気がしています。穏やかな春の海の砂の中に似ています。たまに指で腹のあたりを押されます。そのすかっとした感触に、自分の内臓はもう取られて無いことを思い出します。私が食べてきたイカやカニはどこかに行ってしまいました。一度も彼らを味わったことがないので、懐かしむこともできません。
あなたは、何をどう食べるのか考えて楽しむことができる。それならば是非、知恵を絞って魚介をおいしく楽しくたくさん食べて、健やかに長く生きてください。
おまえらナメてんの? なんでそんなに美味しいんだよ? 生でも美味い。焼いても美味い。干物っても美味い。出汁でも美味い。卵も美味い。肝も美味い。 殺すぞ! ありがとう。
こんにちは、この間殺されたイシモチです。味を褒めてくれてありがとうございます。私は小骨がたくさんあるので、気をつけて食べてください。塩焼きが美味しいと評判です。旬は今...
言及途中で絶命されました
前世がイシモチだった増田。
殺してからゆなー!