友人と二人で飲みに行ったら、普段より友人の酔うペースがはやくて対応を誤ってしまった。
その日二軒目でたまたま通りかかって見つけた、扱う酒にこだわりを見せている感じのおしゃれなビアバーに入って飲んでいたのだが、
自分としては新しい美味しいお酒と出会ったり、友人と味について話をしたり、店の方にお酒の事を教えてもらったりして楽しみたかったのだけれど、
途中から友人の酔いが回って彼の中の自制と周囲への気遣いが消失し、狭い店内であれば全員に聞こえていただろう音量でスマホゲームの話を延々と話し始めてしまった。
何度か遮ったり声を落とすよう頼んだのだが、元々素面でも「敢えて言われたことの逆をやる」冗談を好む彼は、酔っていると全てそういうフリとして受け取ってしまうらしく、
「わかった。わかった。つまらないのは知ってる!俺だってこの話が面白いとは思ってない。でな!!」とまた戻っていく上に、遮る度にむしろ声のトーンが増していく始末。
自分の乏しいコミュニケーション能力ではこの状態になった友人を操縦する方法が分からず、気のない返事をして早く話が終わることを祈りながら聞き流すことしかできなかった。
とはいえ、具体的に周囲から迷惑そうな視線を投げられたわけでもないし、完全に自分の中の規範意識だけの話ではあるのだけれど、
カウンターの並びでお酒好きプチ女子会を開催しているお姉さま方にも、他のお客さんにも、新しい生樽のビールの特徴を常連らしきお客さんに説明している店の方にも失礼な気がして、
早く友人と言う異物をこの空間から取り除きたい一心にとりつかれてしまい、しまいには全く酒の味が分からなくなってしまった。
結局その時手を付けていたお酒が無くなった時点で会計をして、そそくさと退散したのだけれど、
イレギュラーが発生したとはいえ、せっかくのお酒を味が分からない状態でグラスをあけるために煽るという、
店にも作り手にも無礼極まりない状態で酒を飲んでしまったことが二晩経ってもまだ引っ掛かっていて、あの時どう対応するのが正解だったのだろうかとずっと自問自答してしまっている。
とりあえず、その友人と二軒目以降に初見の静かそうな店に入るのはもうやめようと思った。