とあるバイトを辞める前日、たまたまいつも一緒にシフトに入るおばちゃんと休憩時間がかぶった。
だいたいいつも笑顔な人当たりのいいおばちゃんで、嫌いな人じゃなかったから休憩室に二人でも嫌ではなかった。
何がどうなってそういう流れになったか覚えてないんだけど宗教の話になった。
今思えば誘導されたんだろうな。
おばちゃんは俺がどこの宗教にも入ってないとわかるとおもむろに城が印刷されたパンフレットを取り出して、
(嬉しそうにこの城は私たちの寄付で建てたのよ、とも言われた)
最初は何言ってんだこの人と思ったんだが、いかに自分の信仰する神様が凄いかを延々と力説され続け、
眼の光が異常に強いこともあり段々と気持ち悪くなっていった。
今まで普通のおばちゃんだと思ってた人が突然わけのわからないことを喋り、コミュ障のオタクのように一方的にこちらの反応を無視して話す姿は、一瞬で宇宙人に入れ替わったような感覚に陥る。
雰囲気に呑まれたものの、最終的に休憩時間が終わりに近づきパンフレットを押し付けられるに留まったため、ゴングに救われた形となった。
その日のバイトの帰り道、もう明後日にはここには来ないんだな、と思った瞬間
おばちゃんが今まで影すら見せなかった勧誘をなぜこのタイミングでしてきたのか繋がった。
職場に信者であると漏らされる危険性、それによって自分を見る周囲の目がどう変わるのかを良くわかっていたのだ。
「周囲が自分を見る目」じゃなくてさあ、 職場で勧誘するなって注意を既に受けてるだけだと思うよ