死んだと聞いたときは心底ほっとしたし、そうか、こんな解決があるのかってちょっとおどろいた
悲しくもなかったしなんとも思わなかった
だけど今になって悲しい
もともとはわりと仲がよかったんだけど、そいつが公私の区別ができない奴で、仲よくしてるとだんだん仕事を押しつけてきて自分はなにもしなくなって、それがいやで注意はしたんだけどやっぱり「仲よし」だからってずるずる甘えてきて結局変わらない、みたいな感じで、それでもういやになってほとんどもぎ離すみたいにして突き放した
仕事以外のことでは口をきかない、みたいにして
で、突き放してわかったけど、そいつはずっと私に仕事を押しつけてきただけあって、なにもできないし覚えてなかった
突き放したところで私の仕事量別に変わらないし、負担も別に減らないし、そいつは公私の区別ができないから、こちらは仕事上の報告はきちんとしてたんだけど向こうはこちらをまったく避けるようになって、結果的にそいつが報告してこないせいで拡大したトラブルをこちらで引き受けるような目にもあって、もういったいどうしたらいいのかって死にそうだった
その頃ちょうどかなり頼れる人がやめて、残ったのはそいつと、何年たっても一年目の新人よりできない、叱っても見守ってもまったく効果がないようなこちらがびっくりするレベルの後輩と、口だけはえらそうだけど相談したところでなにもしない上長しかいなくて、その頼れる人の仕事分を私が引き受けるような形になって、かなり精神的に参ってたのもある
死ぬのと失踪するのとどっちがいいだろうかと真剣に考えてた程度には参ってて、その頃ようやく友人の懸案が片づいて相談したり愚痴ったりできるようになったからどっちもしなかったけど、あれはけっこうひどかった
なんで私がこんなに神経をすり減らさなくちゃいけないのかと思うと腹が立って、わりと本気で死ねばいいと思ってた
もともとそいつは持病持ちで、突き放すすこし前くらいから悪化してきてたらしくて、まあ顔色も悪いし体調も悪かったんだと思う
だけどなにも説明はされなかったし上長に聞いてみても「問題ないって言ってた」と言うのでそこまで真剣には考えていなかった、まああの上長の話を鵜呑みにしてた私もアホではある
そいつはとうとう仕事中にしょっちゅう居眠りするようになって、もう耐え切れなくて、相当きつく問いつめた
かなり憔悴した顔をしてたと思う、こいつ本気で具合悪いんじゃないかってそのとき思った
その十日後くらいにそいつが死んだ
あれ、自殺のときに理由として使われるって本当なんだろうか、ググってみたけど各論あってよくわからない
私とそいつのことは周囲はみんな知っているので、だれも私にそいつの死についての話をしなかったし、私もしなかった
そいつが死んでほっとしてる私がもっともらしくするのはあまりにも厚顔無恥だなと思ったし、正直それ以上関わりたくなかった
そいつが死んで、心底ほっとしてた
それは間違いない
でも最近ふとしたときに思い出してすごく悲しくなるので、どうしたのかとずっと考えてて気がついた
私は、そいつが死んだときにちゃんと悲しんであげたかったんだなあって
そいつが私のきつい問いつめに耐えられなくて自分で死んだのだとして、そんなこと私のせいじゃない、と思ってたし今でも思う
そいつを突き放した私が悪いんだとしたら、死ぬか失踪するかまで追いつめられてたあの頃の私が救われない
じゃあ私が死ねばよかったっていうのか、と思う
だけど、もともとは仲がよかったはずのそいつがこんなふうにいなくなったことを素直に悲しいと思ってあげたかった
べつに涙もろいほうじゃなかったんだけど、今も泣いてる
それで、もうなんか仕事に対するなにかがぶっつりと切れてしまった
もうやめたほうがいいのか、このまま続けてたほうがいいのか、考えるのも面倒で最近ずっとゲームばかりしてる
もう若くないし、手に職らしきものもあるわけじゃないし、まあすぐには困らない程度にはあるけど金持ちなわけでもないし、これから繁忙期だし
こういう場合ってどうしたらいいんだろう
少し休め おまえは疲れすぎているんだ