私はパソコンが苦手だ。
「半/全」を押すと、入力モードが「あ」になり、その状態でキーボードの「a」を押すと「あ」として、画面上で文字が出てくる。
鉛筆で「あ」を書けばそのまま「あ」になる世界とは全然違う。「あ」を出すためにここまで手順を踏まなければいけない。しんどい。とにかく、機械をいじって画面の中をどうこうするのが駄目なのだ。
私は皆と同じ様にゲームがやりたくて、でもやれない子供だった。
画面の中にある情報を受け取る→それを瞬時に分析して戦略を練る→ボタンの付いたモノをどうピコピコするか決める→指を動かす
ゲームが好きな人はこれを瞬時に難なくやってのけるが、私は何故か出来ない。ただこなすことで精いっぱいになってしまってゲームを楽しめずに終わってしまう。
友達の家で「大乱闘スマッシュブラザーズ」をやった時はとても辛かった。
カービィをただフワフワ浮き上がらせることはできたが、向こうが攻撃した時にどうすれば良いのか(どのボタンをどう押せばいいのか)分からなかった。なのでいつもボコボコにされていた。
ポケモン赤 も辛かった。
敵のポケモンに攻撃されてHPが減る。そこでどうするか考える。その結果をボタンをピコピコして反映させる。
思考を画面の中に反映させるときに毎回「ゲームボーイのカーソル/ボタンを押す」動作が邪魔をしてくることが耐えられなかった。
でも皆がやっていたので私もやった。皆がどんどん四天王を倒していく中、私はまだおつきみ山だった。
運動音痴の人がクラスで遊戯をする時みたいに、ただ私一人がノロノロしてて恥ずかしかった。
大人になってできた友達は色んなゲームを教えてくれた。ピコピコしなくて良いものも教えてくれた。楽しかった。
でも、それはなんとなく「老若男女が遊べるゲーム」として開発された感があって(ほーら簡単でしょ?と言われたものを簡単にできて、楽しいか?)やりこめるものでは無かった。
イングレスもお薦めされてやってみた。ピコピコしなくても良い。でも、ゲームを小さい頃からやり慣れた人たちしか楽しめない空気(今までゲームやってきたけど、たまにはこういうゲームも良いよねーっていう)がそこにはあった。
ポケモンGOがリリースされた。イングレスの会社が作ったという。ポケモンにはいい思い出が無い。イングレスも馴染めなかった。でも一回やってみるかと思ってやってみた。
これは良い。
自分が歩けばキャラクターも歩く。何もしなくても良い。いつもみたいに指をツイーッと動かすだけでOKだし、もしポケモンを捕まえられなくてもタマゴを持って歩けば良い。歩くのは好きだ。
ジム戦でも、画面に出てくる選択肢がとても少なく迷い箸ならぬ迷い指をしなくて済む。ピコピコしなくても楽しくポケモンバトルができるのだ。全部倒さなくて良いのも気持ち的に楽だ。
一番嬉しかったのが、普段からゲームをやっている友達と普通にゲームの話ができたこと。
皆、今まで私とゲームの話をする時はゲームを知らない人向けの話し方をしてくれていた。それはとてもありがたかったが少し疎外感もあった。
ポケモンGOではそんなことは無かった。普通にゲームを楽しんでいる人として話をしてくれているのを昨日初めて感じた。
ポケモンの世界なのに、私はノロノロしていない。上手ではないけれど一応皆と同じ様にゲームを楽しめているのだ。なんと幸せなんだろう。