2024-10-07

anond:20241005054944

柔道五輪メダリスト猪熊功はなぜ自刃したのか」

「私を見て少し微笑んだように見えた次の瞬間、猪熊は「今ならできる!」という低い叫び声とともに机上の脇差を取り上げ一気に首に突き込んだ。」

自殺するまでの過程を書き綴った作品といえば南条あや二階堂奥歯前田仁などが挙げられるが

この本を発見するまでは五輪メダリストがそこに加わるとは思わなかった

本書では猪熊功という柔道少年いかにして東京五輪金メダルという栄光を手に入れるに至ったのか、そしていかにして事業に失敗し、自刃する結末に至ったのか

さらには確実に死ぬために行われた直前三週間の「自殺合宿」と、実際に日本刀首に刺し、絶命するまでの様子が、その一部始終を目撃した猪熊の側近である筆者の口から克明に語られる

自殺に至るまでの経緯や心情を描いたものは数あれど、自殺の一部始終までもが詳細に記された文章というのはなかなかないのではないだろうか(前田仁のように自殺配信という形であれば珍しくないかもしれないが)

決行日が近づくにつれ消費する酒と睡眠薬の量はますます増えていき、体重も落ち、精神に陰りが見えていく猪熊

「なーに、円谷にだってできたんだ。俺にできないはずはない」

同じく東京五輪メダリストで、剃刀で頸動脈を切って死んだ円谷の存在が心の支えになっていたようだ

いくら人間離れした屈強な精神力を持つ金メダリストとはいえ自殺ともなれば平常心ではいられない

考えてみれば当たり前の話だが、その様子を詳しく解説されると、ああ金メダリストといえど自分と同じ人間なんだな、という妙な親近感のようなものが湧いてくる

とりわけ靴ベラで首を突く練習をする下り自分と全く同じことをしていて思わず笑ってしまった

五輪はおろか運動音痴意志薄弱な私がこんなことを言うのは冒涜に等しいだろうが

「なーに、猪熊だってできたんだ。俺にできないはずはない」

そう思わせてくれる一冊だった

記事への反応 -
  • 猪熊功(東京五輪柔道金メダリスト) 「なーに、円谷にだってできたんだ。俺にできないはずはない」  猪熊がそう言ったのは、自殺する2週間ほど前だ。円谷とは、64年東京オリ...

    • 「柔道五輪金メダリスト猪熊功はなぜ自刃したのか」 「私を見て少し微笑んだように見えた次の瞬間、猪熊は「今ならできる!」という低い叫び声とともに机上の脇差を取り上げ一気...

      • 自殺するヤツって脳筋なんだ!😯 ずっと文系がするもんだとおもってた そうだよな、よく考えたらある程度の身体能力もってないと人体に致死レベルの損傷をあたえることなんてでき...

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