裕福な家庭に生まれた。
港区で生まれ育ち、幼少期から何不自由なく暮らし、いくばくかの愛情も与えられた。
多少要領も良かったようで、小学校から高校までをエスカレーターで過ごしたのちに一流と言われるような大学へ進学した。
容姿や周囲の人間にも恵まれ、当時は気がつかなかったが思い返せば幸せな時間をおくってきた。
こう聞けば羨ましがられるかもしれないが、これらと引き換えに失ったものもある。
多くの人は、お金持ちになりたい、いい家に住みたい、素敵な家庭を築きたい…多かれ少なかれ何かしらの目的を原動力として学業や仕事に励んでいるだろう。
自分にはそれがない。というよりも全て達成していた。
裕福がゆえに、およそ目的となるようなあらゆる体験を幼いうちに済ませてしまっていたから。
そんな空虚な中で仕事だけは小さな動機となっていたが、それなりの才があり欲しい評価をすでに手に入れてしまった。
残った人生の動機は親孝行だったが、数ヶ月前に父が亡くなってしまった。
母は幼い頃に他界したので、自分は天涯孤独の身となったことになる。
成し遂げたい目的があれば立ち直れたのかもしれないが、そんなものは残されていなかった。
社会の中で実現したい欲求があれば良かったのだが、前段階となる自己の欲求が消失している自分に見つけられるはずもなかった。
まだ20代も半ばだが、おそらく自分の人生はすでに終わった。このまま朽ち果てていくことを薄々感じる。
だらだらと書いているうちに何が書きたいのかもわからなくなってしまった。
同じような幼少期を過ごした仲間が自分のようにならないことを祈っている。
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