でもいつまでもコンプレックスなままなのもどうなのか。そう思い、一念発起して食べに行ってきた。
お店の扉を抜けると柔らかい笑顔が特徴的な、優しいおじさんに出迎えられた。まずはテーブル席に案内されると俺は壁に目をやり、思った以上に種類があるのを知った。
迷いながらも結局は先にホームページで確認して決めていた通り”ガーリックチーズナン”を指名した。ドキドキしながら待っているとガーリックチーズナンが運ばれてきて、写真で確認したものよりもり艶やかで、可愛かった。
ガーリックチーズナンはニコニコしながら俺を出迎え、俺は少し挙動不審だったのかもしれない。だから「実はこういうのは初めてで……」と先に申告した。ガーリックチーズナンは驚く様子もなく、微笑のまま「そうなんだ」と言ってくれた。
水で口の中を清め、さっそくいただくことにした。一口、小口で慎重に頬張ると口の中でチーズがトロトロに蕩けた。「あっ……」とガーリックチーズナンが卑猥な声を上げる。俺は興奮した。あまりに旨かったのだ。続けざまにガーリックチーズナンを頬張る。しかし焦らず、慎重に。あくまで少しずつ、相手が嫌がることは駄目だと自分を咎めるように。だが止まらなかった。気付けば貪るようにガーリックチーズナンを求める自分に気が付いた。まるでずっと忘れていた野獣のような本能を思い出したかのように。
心を満たすような満足感と共に心の何処かでは”こんなもんか”といった冷める自分もいた。
だがこの行動自体に対する後悔はなかった。自分はこれでもう”チーズナンを食べたことがない”といった、一種のコンプレックスからは解放されたのだから。
確かにチーズナンは美味しく、そして心を満たすものがあるように思えた。
それでもどうして人はそれほど頑なにチーズナンを求めるのか?未だ理解し切れないところがあるのも事実だった。単に自分の経験不足のせいかもしれない。そんな気もしていた。
ワイはチーズナンテイクアウトしてメープルシロップかけて食うのが好きやで。
店員「カレーも注文しろよ……」
チーズナンうまいけど結局カレーにはプレーンナンの方が合うんだよね
ワイはチーズナンの存在に気づいてからは普通のナン食べなくなったやで。