「生まれつき優れている人間が、その優位性を思う存分に発揮することは、他者を傷つける悪しき行いだ。天より強さを与えられたものは、弱者のためにその身を捧げるべきだ。生まれつきの強者に、自分の人生を楽しむ資格なんて無い。なぜならズルいから」
俺はずっとそう思っていた。
でも……間違っていた。
今やっとわかった。
俺が間違っていた。
生まれつき優れている人間は、その力を思う存分発揮して良い。生まれつき優れているままに、幸せになっていいんだ。
俺を苦しめていたのは、この世界に無数にいる生まれつきの強者じゃなかったんだ。
強者はただそこに強くあるだけ。
そして、その強さによって突き進む未知の中で、弱者に豊かさを与えてくれさえもする。
じゃあ、何が俺を苦しめていたんだ
U149を前に強者への嫉妬に生きる道を諭されてから2ヶ月ぐらい考えていた。
答えは得た。
俺の敵は「他の子は出来ているんだから、貴方も頑張りなさい」だったんだ。
俺はずっと比較されることに苦しんでいた。
「なんで他の奴は出来ているのにお前は出来ないんだ」といつも比較されていた。
生まれつきチビで親譲りの運動神経の鈍さに悩む俺は、体育の授業では教師からも学友からもボロクソに「舐めとるんか?」と人格を疑われ続けていた。
勉強でも得意科目と苦手かもを比較されて「なんでこんなに差があるんだ?されはやる気がないんだろう」と貶されたこともある。
他人や、得意なことをしているときの自分を使って、自分が自分なりに真剣にやって結果が出なかったことを否定されると、本当に心底辛かったんだ。
生まれつき太りやすい人は「食べても痩せない」という言葉に傷つくらしい。
でも本当にその人を傷つけているのは「どうせ影で沢山食べているんでしょ?そうじゃなきゃそんなにデブじゃないよ」といった言葉を思い出してしまったことなんじゃないだろうか?
俺はやっとその事がわかってきた。
U149を見る前の俺は、すげー奴らを見ると、心のなかに「コイツら基準で比較されたら、俺はいよいよコテンパンにされてしまうだろう。どう頑張ってもこんな事できないのに、やる気を出せ嘘つきは死ねと言われるんだろう」という恐怖が湧き上がっていた。
そして、その恐怖の原因はすげー奴らがすげーことをしているせいなんだと勘違いしてた。
違うんだよ。
憎むべきは叩き棒にされた側じゃない!
叩いてくるやつなんだ!
俺はやっとわかった。
本当の敵が見えた。