https://morningrain.hatenablog.com/entry/20180411/p1
2018-04-11
第9章では、「存在感を増す第三者」と題して、今まで労使自治の原則に任されていた日本の労働市場において、政府の役割が強まっていることを、最低賃金と派遣法を例に示しています。
まず、最低賃金ですが、これが低くとどまっているならば、労働市場にそれほど大きな影響を与えません。ところが、近年、生活保護との逆転現象を解消するために最低賃金の大幅な引き上げが行われており、最低賃金が実質的な賃金を決めているようなケースも見受けられます。街で見かけるアルバイトの求人などを見ると、最低賃金の上昇に合わせるように年々時給が引き上げられているのがわかるでしょう。
まず、男性よりも女性の方が最低賃金ラインで働く人が多く、都市と地方の比較では地方のほうが最低賃金ラインで働く人が多いです。
この男女差と地方差を考慮に入れながら、最低賃金の引き上げがいかなる影響を与えているのかを示したのが360-361pの図9-2です。このグラフは本当に素晴らしいのでぜひ現物を見てほしいのですが、以下にあげる東京都の男性のグラフだけを見ても、最低賃金の引き上げが低賃金層の賃金を押し上げて圧縮しているさまがわかると思います。
このページには他に東京の女性と青森県の男性・女性のグラフがあるのですが、いずれも東京の男性以上に影響を受けており、特に青森県の女性では最低賃金ラインにそびえ立つ崖ができています。
また、最低賃金よりも少し上の部分にコブのようなものができているのも特徴です(東京都男性だと1000円ちょっとの部分)。日本の最低賃金の引き上げは、一番賃金の低い層だけではなく広範囲に影響を与えているのです(このコブができる理由については373-374pにおいてジョブ・サーチ理論を使って分析されている)。