2021-09-25

いもむしが手強い。

 子供が育てている鉢植えのコスモスに、黄緑色いもむしが一匹くっついていた。色がきれいでぷりぷりで小さくて可愛いが、いもむしはいもむし。小さくても大食漢だ。小さなコスモスの一本くらい、余裕で食い尽くすので、取り除かなければならない。子供は「はやく取って!」と半べそでわめいていた。

 正直私もいもむしは苦手なので、ゴワゴワのゴム手袋を両手にはめ、いもむし感触を手に味わわないようにして望んだ。

 いもむしは私達に注目されるなか危険を感じたようで、小さな身体をピンと立ち上げて、いっちょまえに枝のふりをしていた。だが、コスモスの枝葉は細いので、いもむしはどうみても立ち上がったいもむしだった。

 子供時代小学校の生き物として、嫌々お世話を任されていたモンシロチョウの幼虫のことを思いだし、捕まえるのは楽勝だと思った。奴らは目の前に指を差し出せば、何の疑いもなさそうによじよじとよじ登ってきたものだ。

 ところが、目の前のいもむしは手強かった。指で背中に触れると、いもむしってこんなに素早く動けるの!? と思わず驚嘆するほどのスピードで、コスモスの葉を伝い逃げ回った。こちらとしてはうっかり潰してお手手が大惨事になることは避けたい。そんな弱い心を見透かしたかのように、いもむしゴム手に覆われた指先をすり抜け、枝から枝へと器用に移動する。そっちの枝に逃げたかと思えばあっちの枝に飛び移る。こいつの前世は猿だったのではないか? というくらい素早くてトリッキームーブ

 しかもなんというか、こっちが悪いことをしているというのをまざまざと見せつけてくれるような、哀れを誘うような仕草で逃げるので、潰しちゃいけない気が増し増しでごめんと謝りながら攻撃を加えることになる。

 激しい攻防戦に、私の方が先に疲れて、手を止めた。途端にいもむしはぴたりと動きをとめると、おもむろにコスモスの葉っぱの先を齧った。

「シャクッ」

 あかん捕獲せねば。再挑戦。いもむしは逃げ回る。私は疲れて止まる。いもむしも止まった。なんかもう直接攻撃は無理じゃね? と思い、子供に、枝一本犠牲にしてもいい? と確認したら、嫌だとゴネられた。そこから腐ったらどうしてくれる? と。でもこのままでは枝一本やられるどころか幹の根本まで食い尽くされますけど? と説得。なんとか枝一本を犠牲にすることの許可を得る。

 頭上で人間達がもめているのをよそに、いもむしはもう安全とばかりに葉っぱの先を食んでいた。私はいもむしの載った枝の根本に狙いを定め、引きちぎろうとしたが引きちぎれなかった。

 コスモス案外丈夫! 8月に蒔いた種からまれ育った株だったのでイケるかと思ったが無理だった。枝を引っ張ったら全体が引っこ抜けそうになった。そうこうしている間にいもむしは私の指を避けて別の枝に乗り換えた。私が取ろうとした枝はぼろぼろになって最終的に付け根から取れたが、枝と一緒に幹の表皮が長々と剥けた。

 こうなったら最終手段だ。黄色い汁とか飛び散って大変なことになるかもだけどいい? 子供はおごそかにうなずいた。いざ。

 デコピン攻撃! デコピン攻撃! デコピン攻撃

「あ゛ーっ!!!!!」

 弾け飛び撃墜されるはずだったいもむしは何故か私の手の甲にいた。ノーダメージ。そして元気にゴム手の上を這い上がり、ゴム手の縁から手袋の中を覗いている。そっちはダメよ!! 手を振り回してもいもむしは落下せず、私は庭の雑草をちぎってわめきぐるぐるまわりながらいもむしの前に草を差しだした。いもむしはスッと草に乗り移った。私は草を遠くに投げようとしたが、草は私のあしもとにポロリと落ちた。

  • 食草でいえばキアゲハちゃんだろうけどそんなすっとろいことでどうやってバッタ捕まえるの 嘘松やん

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん