2021-04-04

きよしこ」ではじめて物語感情移入した

私は吃音症というやつで、うまくしゃべれない。「どもる」というやつだ。

きよしこ」は、吃音である重松清実体ベース(といわれている)の児童小説

主人公の「きよし」の小学生高校生時代を描く短編集の形になっている。

私はこれを読んで、はじめて物語主人公自分を重ねるというのを体験した。

今まで読んだ小説映画ゲームなどでは、どんなに不器用キャラクターでも、「普通にしゃべる」ことができていると、「自分とは別の生き物が何かやってるなあ」という気持ちしか見ることができなかった。

もちろんそれはそれとして楽しめるんだけど、「主人公自分を重ねる」という楽しみ方とは縁がなかった。

きよしこ」は私にはじめてその体験をさせてくれたのだ。

言えないもどかしさで、モノに当たってしまう。

転校か、また自己紹介しなきゃいけない...

母親吃音を治す教室に通わさせてくれるけど、効果があるとは思えない。

加藤くんと仲良くなりたいけど、「カ」は苦手な音だ。

いじめっ子が怒ってどもらせるためにちょっかいをかけてくるけど、全部無視

今こう言ったら、みんな爆笑するだろうなあ。でも言えない。

言葉に詰まっていると相手が「コーヒーですね」と察してくれるけど、本当は「紅茶」と言いたかった。

全部覚えがある。きよしは私と同じだ。

そんなきよしが、吃音を抱えたまま大きくなっていくのを、自分のことのように喜べた。

大げさだけど、物語を味わう喜びをやっと知れた、という気持ちになった。

それだけです。

どうやら最近NHKで実写ドラマ化されたらしく、オンデマンドで観てみようと思う。

吃音の痛々しさ、というか生々しさは文字よりも動画の方がダイレクトに伝わると思うので、楽しみであり怖くもある。

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