2021-01-09

私小説

子供が欲しいと思ったけど、夫の精子ほとんど運動していないと先月医者から告知された。

今 日、 二軒目の泌尿器科で精密検査をしたけど、やっぱりダメだった。

帰ってきた夫は、「治療は薬を飲むことからはじまる」とか「また三ヶ月後に通院だ」とか話して、

思ったより 悪い結果だったね?落ち込んでる?と聞いてきた。

自分よりも子どもを欲しがっている私の事を気にしてるのだ。

子供がいてもいなくてもいい夫は、いつもどこか楽観的で少し私を苛立たせる。

作らなかったらいつか後悔するかもしれないから、欲しいかな、夫はいつもそんな風だ。


三ヶ月前ふたりで受けた妊活ドッグは、ミカ健康体だった、卵子のも歳のわりに多いらしい。

ミカ は小さく、そうだね、と答えた。頑張れば明るく答えることもできたけど。

アスペルガー気質のあるマナブには、明るく答えると本当に気にしていないと捉えられるがちなのを、 この三年で学んできたからそうしたくなったのだ。


気分転換イオンモールに出かけてスタバにでも行こうか、 ということになった。

髪型はこれでいい?とマナブが聞いた

マナブの髪はいつもちょっとだけイマイチだ、

特に今はコロナからと、髪を切りに行ってなくて伸びかけで余計決まらない。

もっとグリースつけたら?と言ったら嫌そうにしていた、

しょうがない、ミカが落ち込んでるみたいだから言うこと聞いてやっか」

マナブはそう言ってやれやれと拗ねたような笑い方をして茶化した、

その瞬間、ミカは何もかも悲しくなってしまった。

責めてはいけないことを責めないように、

落ち込んでも仕方のないことを落ち込まないように、

必死気分転換しようとしている気持ちもなにもかも、アスペルガーには不可視なのだった。

結婚直前から毒親気味の姑とマナブトラブルに散々巻き込まれてきたことや、その辛さを泣いて訴えても、

「やりようがないんだよ」と寄り添ってくれなかったときの胸が張り裂けるような痛みが、フラッシュバックした。

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