大金持ちになるのは難しいにしても、大金持ちがやっている贅沢の一部分だけを再現するのはそう難しい事ではないのではと思い立ち、一万円以内で出来る日本一の贅沢というものを探してみた。まず候補にあがったのは海苔、梅干し、耳かき、爪切り、目薬、歯ブラシ、鉛筆と言ったところだ。詳しくは調べてないが、きっと最高級でも一万円以内で手に入るに違いない。そこまでは完璧な計画だったのだが、自分は市役所に同窓会の名簿を提出していないことに気がついた。年末年始を挟むと手続きが大幅に遅れるし、最悪の場合は書類が担当者の机の中で行方不明になる事もあり得る。クリスマスも落ち着いて年賀状が始まる前の今このタイミングで駆け込めばGOTO中止のどさくさでふらっと先生が寄ってくれる可能性もある。急いでお風呂場のシャワーヘッドを取り外してスマホのカメラで撮影し、LINEの友達リストの上から順番に写真を送って反応を確かめた。結果は9勝67敗...まずまずと言って良いかもしれない。いや、このコロナ禍ではむしろ奇跡と言っても良いかもしれない。手応えを感じることができたので早速100円ショップでシャチハタ印を買えるだけ買ってきて、小学校の校舎の前で下校中の小学生に1人1つずつ配った。「これが君の新しい名前だよ」そう呟きながら握手を求めたが、大抵の子供は印鑑だけ貰って逃げた。子供ってそういうところが怖い。