片道約2時間かけて、今時クレジットカードも使えないような小さな小さな映画館にわざわざ足を運んだ。少々面倒くさい気持ちはあったけど、行かなきゃ後悔するような気もしていた。
原作は未読、予告は一度だけ見たくらいで主演2人のこともさほど知らない。BLにおいて何がスタンダードなのかもわからない。そんな私がなぜ決して安くはない映画代1800円を払ってまでこの映画を見たいと思ったのか、見終わった今でもはっきりとは分からない。ただ一つ言えることは、私は再び1800円を財布から出そうとしているということである。
予告映像を見た時、とても綺麗な2人だと思った。妙にバランスが取れていて、それでいて脆そう。私は恋愛映画に美しさを求めがちなのだが、主演のお二人はまさに私の思い描く美しさにぴったり当てはまった。R15だということもあり、地上波では放送されないような気がしたし、なんとなく憂いを帯びそうな映画のような気がして、1人で劇場に行こうと決めた。
内容のネタバレはしないが、物事の対比や心情の描写がとても繊細で、そして何より全ての音が上質だった。書類をめくる音、革靴が擦れる音、肌が触れ合う音、その全てが心地よくてそれだけで劇場で観るに値する映画だと思った。成田さんの視線の使い方、大倉さんの軸がない揺らいだ空気の纏い方は圧巻でした。凄かった。
こんなに美しい二人が、熱を持って身体を重ね合う画はどんなにアダルトビデオに課金しても見れないものだと思う(海外ドラマや映画だとあるのかもしれないけど、日本では珍しい気がした)
登場人物たちは、ありきたりの言葉やなんとなく良い感じの言葉ではまとめられない、人間の愚かで汚くてまさに「ドブ」の中でもがいているような感情も包み隠さず全部見せてくれる。
あと、ちょっとだけ内容に触れると、ワインをプレゼントするシーンの二人のやりとりが堪らなく愛おしくて良かった。基本的にいつも真っ直ぐ真っ直ぐ辛そうなイマガセがこの時ばかりは心の底から嬉しそうだった。頼むから口約束にしないでよ、キョウイチさん。