姉は小さい頃本当によく笑う子だった。活発で明るくて、周りを笑わせるムードメーカーだった。私も一緒について回って、よくふざけたりケンカしたりした。
姉の笑顔が減ったのは中学受験の頃からだった。大好きだったおもちゃやゲームは捨てられ、たくさんあった漫画も全部参考書に替えられた。姉は放課後すぐに塾に行ってしまうので、二人で遊ぶ時間もほとんどなくなってしまった。
姉はなんとか親が希望する中学に合格した。親は喜び、姉もそれに喜んでいるように見えた。また元の姉が元の時間が戻ってくると思った。
しかし姉は今度は大学受験のために塾に通うようになった。帰ってきても食事と宿題で、それをただただ機械的にこなしているように見えた。姉が大好きだったピアノも、埃をかぶっていた。
毎週テストで順位がつけられ、低いとよく怒られていた。まるでテストの出来が姉の価値のように。
この頃から口数もどんどん減っていき、家族のムードメーカーだった姉は両親に対してほとんど何も喋らなくなっていった。ただ両親が一方的に喋るだけ。唯一私にだけは、今日どんなことがあった?だとか毎日の様子を聞いてきたりした。
数年後姉は両親が希望する一流大学に合格した。でもこの頃にはもう姉が笑うことはなくなっていた。合格した時も両親は狂喜乱舞していたが姉はひたすら無関心そうだった。
大学に入って姉は引きこもるようになった。大学にはほとんど行っていなかったと思う。部屋からも滅多に出てこないので様子は計り知れなかったが、テレビの音と缶チューハイを開ける音、時々すすり泣く声だけが聞こえてきた。
数ヶ月後に大学から留年通知が届いた。こんな状態になってようやく、両親は姉を心配し始め、もう無理に頑張らなくていいよなどと言っていた。姉は無反応だった。あと少し早くその言葉を言っていてあげたら、姉の人生は違ったのだろうか。
両親の希望は姉が全て叶えたので、私はこんな風にスパルタ教育を強いられることはなかった。でも、できることなら変わってあげたかった。姉にもう一度笑って欲しかった。私に何ができたんだろう。
改行多すぎ
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