技をかけるのは下手だったが、受け身のうまさはよく褒められていた。
長続きせずに辞めたうえ、筋トレもろくにやってなかったので基礎体力的なものもつかずじまいだった。
勿論、その地域の小学校から上がってきた子たちはすでにグループが出来上がっていた。
そこで、出来上がっている輪に自分から飛び込んでいく勇気がないことに気づいた。
いわゆる人見知りが発動することを自覚したのがこの辺だった。
幸いにして同じ小学校出身の子が隣のクラスにいたので、その子のグループにたまに呼ばれてやり過ごしていた。
高校にもなれば全国いろんなとこから受験で集まってくるので、出身はバラバラ。
みんなお互いを知らない、スタートラインは一緒だ。
でもやはりここでも僕は人見知りを発動し、見事にスタートダッシュに失敗。
起死回生の一手として文化祭の実行委員になってみたが、溶け込めずにむしろいい感じに孤立が加速した。
ただここでも幸いにしてグループに拾われることになる。
同じくクラスでなんとなく孤立していた奴がいたのだが、そいつは所属していた柔道部の集まりに遊びに行っていた。
ひょんなことからそいつの輪に混ぜてもらうことになり、柔道部に出入りさせてもらうようになった。
すでにもやしっ子として完成していたが、柔道経験者ということもあり、軽く組み手の相手になったりしていた。
そこでも、お前受け身うまいな、と褒められた。
ああ、確かに、僕は人間関係についても、ひたすら受け身でやってきたなぁ、と。
なんかしみじみ、こんな奴でも拾う神はいてくれたんだよな、なんて思う。
社会人になってからは、受け身で仕事してるようじゃダメだ、と怒られてばかりだが。
たぶんこの先オトナとして生きるにあたって、受け身じゃダメなことが増えていくな、とは思う。
ただ、これまでの学校生活で僕を拾ってくれた友達とは年1、2くらいで定期的に集まっている。
もちろん、集まろう、と音頭をとるのは僕じゃないけど。
受け身ならうまいので、今年の夏もいい感じに予定を空けて連絡を楽しみにしている。