仕事内容が辛かったわけでもない。
ただ、完全にモチベーションが保てなくなった。
毎日の仕事はルーチンになっていて、別にモチベーションなんてなくてもこなすことはできていた。
だけど、主観的だけど仕事の質がどんどん下がっているように感じた。
気がつくと俺はストロングゼロを飲むようになっていた。
ストロングゼロを飲んだ時だけ、世界は鮮やかに色を取り戻した。
それでも仕事量に変わりはなったし、評価されるだけのことはしているつもりだった。
ひとつだけ変わったことといえば、夜にやってくる曖昧で鮮やかな時間のことを考えることが増えていった。
俺のいた会社は8月から10月にかけてがいわゆる繁忙期だった。
じりじりと続いていた残暑が突然終わった。
その朝、俺はストロングゼロがまだ抜けきっていない頭で通勤していた。
ぼーっとしたまま、家を出て、なんとなく電車に乗って、なんとなく会社に着いた。
会社は文教地区にあって、近くには小学校、中学校、公立の高校があった。
学生たちが通学していた。
最後の出勤の前日に和月が捕まったことだけが、記憶の奥の方で鈍色の光を放っている。