アニメといえば、ストーリーがきちんとしたものしか興味がなくて、萌え系、ほのぼの系は1話で切ってた
そんな俺がブラック企業で激務にいそしんでいた日々で、家に帰ってたまたまつけたテレビでけもフレをしていた
すごーい! たのしー! なんていう平和で、優しい言葉が飛び交うだけのアニメを見ていて、俺はなんだか泣いていた
月の残業130時間を超える生活が何か月も続いてて、会社の往復以外はどこにも行くことがなく、ゲームすらやらなくなっていた俺が、なんだかぼーっと見ながらぼろぼろと泣いていた
画面の中のサーバルもかばんちゃんもとにかく尊くて、見ているだけで身体が湯船につかっているような気持になって、溶けていく気がした
頭の中のぐるぐるに巻かれた鎖が解れていくような
あの中には、納期納期と騒ぐ上司も、仕様変更を言い渡してくる営業もいない
優しい世界が広がっていた
毎週けもフレを見ることだけが楽しみになって、なんとか地獄のデスマーチを乗り越えた
円盤も買った
当時俺はあのアニメに救われた
角川が悪いとか吉崎おにいさんが悪いとか、犯人捜しはどうでもいい。
俺を救ってくれた、別世界のあの優しいアニメが、俺の世界線に転がり落ちてきたのが本当につらい
権力争いとか、金の配分とか、嫉妬とか、そんなのがないあのアニメが大好きだった
内容と作った環境が違うのはわかっているけれど、俺の中で、けもフレはきれいなガラスの箱に入った、キラキラした星の砂みたいなものだった
その箱のふたが開けられて、中身が俺の部屋のテーブルの上にぶちまけられているような感じがする