心理学とか哲学とかの書籍を読み漁っていた頃、日頃からそんな話ばかりをしていた友人から突然相談を受けた。
「付き合ってる彼女が見ず知らずの男にマインドコントロールされて奪われてしまいそうだ。なんかクスリとかも勧められてて危険な状態らしい。君はそういうのが詳しそうだから何かのヒントになるかもしれないから僕のことをマインドコントロールしてみてほしい」
ざっくりいうとこんな感じだ。
内心ではまったくもって知ったこっちゃねぇとか思いながら、マインドコントロールにも興味があったので乗ってみることにした。
テーマは殺人。彼は何があっても絶対に殺人は良くないと言った。
ならばそれを変えられればマインドコントロールは成功だ。
大病に悩む人に対する自殺幇助、遭難時にどちらかが生き残るための自己犠牲、戦時中の致命的な負傷者に対する苦しみからの救済、医療的安楽死。
他者が他者を殺めるということに対する正当性をこれでもかというほど並び立てた。
あと少しで説得できると理屈をさらに並べると、彼は突然怒りを露わにした。
結局実験は失敗に終わったどころか、彼とはしばらく疎遠になってしまうことになった。
その後風のうわさに聞いたところによると、その彼女は暴力団に貢いで風俗に堕ち、彼は夢に描いていた漫画家になれると自称有名マンガの原作者にそそのかされて変なおっさんを家に住まわせているらしい。
自分がしたことはマインドコントロールではなく論破だとわかったのはあとのことで、同時に論破されると感情を露わにする人間がマインドコントロールの魔の手に落ちやすいと知る出来事になった。
登場人物が全員低能