全四十巻(仮)の大作だった。読了感も良く、久しぶりにいい漫画を読んだ、と実感できた。
とくに感銘を受けたのは終盤における「××というキャラクターの覚醒シーン」であった。
俺はネットの海で検索を始めた。きっと自分と同じような感覚をだれかが抱き、そのだれかが感想を書いているに違いないからだ。
果たして、その××の覚醒シーンに対する感想は一件もなかった!!!
いや、ウッソだろ、嘘だろ。おい。
「いやー○○の激闘はよかったよね。痛みに耐えてよくがんばった!感動した!」だとか
「いやいや□□のカーチェイス(仮)シーンもかなりのものでしょう。あの緊迫感はたまらなくよかったね」とか、
そんなんばっかりだ。
いやいやいやいや。
××の覚醒シーンに至るまで、ラスト十巻ぐらいずーっと××の生い立ちとか、どうしてここまでひねくれた性格になったのかだとか、
とにかく××メインでやっていたじゃないか!
などと思っていると、××に対する感想が目に入ってきた。
「××ほんまクズ」
「死ね」
「なんでこいつが終盤の尺独占してんの?」
「いや…最後に覚醒されたからって今までの言動は帳消しにならないんだが…?」
仲間を仲間と思わぬ言動が目立ち、空気を読まず、ストイックさとわがままさをはき違えており、端的に言って性悪だった。
今までの言行を思い返して涙を流して反省し、
「神様、俺の願いはもう叶わなくていい、あいつらを救ってくれ!」(仮)とまで言ってくれたではないか!
覚醒シーンで感動したのは、どうやら世界で俺一人しか居ないようだ。
悲しい。
俺が読んだ漫画「A」と世間一般に流通している漫画「A」はもしかしたら別の漫画なのかもしれない。
きっとそうだ。