天鏡のアルデラミンの十巻を読んだ。前巻までの重々しい雰囲気から希望の持てる明るい展開になったのが印象的だった。
物語の分配としては二部構成というか、前半の戦闘場面と後半の人間模様とでがらりと空気感が変わる展開になっていた。前半については今まで辛酸を嘗めさせられてきた相手に一泡どころか二泡三泡吹かせることができた一方で、ちょっとばかしイクタのチートっぷりが悪い具合に露見してしまったように思った。それまで追い詰められていたから爽快感のある快進撃が見られるのは満足ではあるんだけれど、一応相手がとても強いライバルポジションの軍師なんだから万能感を全面に出しすぎてはいけなかったんじゃないかなって思った。
展開的に仕方がないっていうのが一番の要因で、イクタという存在の全編通しての立ち位置にも要因はあるんだろうけど、ちょっとあっさりしすぎてたかな。確かに最強の助っ人が来たのに重苦しい雰囲気のままだと読んでいて辛かったのかもしれない。内容的にも簡単な戦闘ではなかったのだけれど、安心感がありすぎたように感じた。
さて後半部分。賛否両論の顛末を迎えるわけだけど、個人的にはあれはあれでよかったかなあって思う。ハッピーエンドが好きなこともあるけど、心底つらい状況においては一定の救いがなければならないと思う。その点、七巻は救いがなさすぎたわけなんだけど、前回あんだけどん底に突き落とされたんだから今回こそは報われて欲しかった。
ただまあ簡単に懐に戻し過ぎかなとは思う。もちろんみんな葛藤しているし、人間らしい葛藤をわかりやすく表現してくれてるキャラクターもいるんだけど、元の位置に戻りすぎているきらいはあったかな。手酷い裏切りに対してあまりにも優しすぎるし、受け止めるのが早過ぎる。物分りが良すぎる人物ばかりなのが残念ではあった。
物語もまた新たな展開を見せそうで、これから世界の謎や精霊の不思議に迫っていきそう。楽しみです。見てないけどアニメも頑張れ。