2016-01-25

雪が降ると思い出す、あの子

我が家のしきたりでは、高校卒業し18歳の春をむかえると、子供は家を出て各自裁量生活することになっていた。

もし進学したければ、学費は出してもらえたが、それ以外の生活費基本的自分で出さなければいけなかった。

俺はというと、地方国公立大学に進学を決めていたので、大学近くの安い学生寮に入ることにした。

学生寮といっても住んでいる連中は、大学専門学校生はもちろん、ミュージシャンの卵やフリーターなどおおよそ金のない若者の見本市のようだった。

その寮にひとり、場違い雰囲気不思議女の子がいた。

近所にある美大予備校に通う浪人生で、名前はミユといった。

ミユは、白磁器のようなすべすべとした肌で、墨でひいたような黒髪を鎖骨まで伸ばし、前髪は切れ長の目の上で揃えていて、一見クールな印象だったが

それでいてあまり高くない鼻と薄く小さい口に幼さが残り、ちょうど子供から大人へ移り変わるところといった顔立ちをしていた。

冬場はいつも暖かそうなクリーム色のとっくりセーターと黒いタイツを身につけていて、そのふっくらとした女性的な体の線に心乱された男も少なくなかった。

容姿は目立つのに、自分から目立とうとはせず、ひとりのときは絵を描いていて、みんなといるときバカな話をニコニコと聞いているような子だった。

 

つづくかも?

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