昔の方が粗があったし、昔の俳優の方が目に見えて演技が棒だったけれど、
それを有難がる人っていうのは、昔の人越しのフィルターだから補正が加って
実際にはそうでない事が、懐かしさと郷愁とが相俟って黄昏たくて素晴らしかったと言う。
筆者は未だに高倉健の演技力が素晴らしかったとは思わないし、エヴァンゲリオンが社会現象を巻き起こすほどのドラマ性の高いアニメだったとは考えていない。
それは、昔を知らないからだ。
昔を知っている人はその当時の感動を今も引き摺っている。
だからこそ、未だに現在の対象物に対して昔の比較相手を引き合いに批判している。
今を知り、昔を知らない人からすれば、昔の良かった事は古臭い考え方と批判する。
例えば、現在の就職活動の現状と昔の終身雇用制度が成り立ってた何もかもが良かった時代を比べる事はナンセンスである。
何故なら、今は当たり前のことが昔にはなく、逆もありきだからだ。
昔を知っている人なら、今の人は甘えてるとかゆとりとかって批判するけど、
今の人が昔の人を団塊世代だからとか昔の方が融通が利いたからとかをよく耳にする。
当り前だけど当り前じゃない時代があって、それを現在の在り方に対する批判というのはよくある事だけど、
それは昔を知り今を知っているからこそできる事であり、片方しか知らない人が多いから有難味が分からないのである。
最初に出した高倉健やエヴァンゲリオンにしても昔を知っている人なら非常に楽しい話題だけど、そうじゃない人には当然意味が分からないし
そういったコミュニティに入れない事に内心苛立っている。
逆もまた然りだ。
昔のアニメを有難がる風潮は、昔を知り今を知らない人あるいは、今のアニメを否定する古い型の人間であるからだ。
昔の俳優の演技力は素晴らしかったという風潮は、ジャニーズやAKB48などのアイドル風情の演技力とかそういった人ばかりが現代ドラマに出まくってる事への反感である。
実は両方とも同じである事に気付いていない。
昔の人には昔補正というフィルターが加っている事は前に述べたが、現代もさして変わらないのではないか。
アニメもエヴァンゲリオンの後に涼宮ハルヒ、まどマギ等と言った社会現象に似た現象が巻き起こっているが、その規模はその時々によって異なる。
たまたまエヴァの時代は就職氷河期だった事もあったし茶の間世代が多かったために大人も夕方アニメを見られる時代であったため、社会現象になり易かっただけである。