2014-03-18

国立国会図書館はお気づきでしょうか」について

素朴な感想は次の通り。まず「安く買うことはお客様に失礼」という価値観を共有できない。次に「適正な価格で売る」の「適正」が恣意的ものであることへの認識が欠けている点が気になる。それから「高く買い入れて売る機会を失っている状態に憤りを感じ」るというのがよくわからない。

古書価値について。「古書を売る」というのが紙の本という特定メディア依存した商業形態である以上、電子書籍の登場によって古書価格が落ちるのは市場原理から考えて必然古書の内容を求める需要電子化により満たされてしまうのだから。だから価格低下も必然。そこを受け入れたくないということになると、電子書籍排斥するか資本主義経済革命するかという話になってくる。どっちも無理なら「受け入れたくない」ということについて精査するほかない。

「(紙の)本がいいか/電子化された本がいいか」という議論がなされているけど、これは飛躍。そこまで話を飛ばす必要がない。何度となく言われていることだけど、そもそも両者は対立関係にないということを認識するべき。更に言うと、国立国会図書館近代デジタルライブラリーのしたことは、本を買う側の人間お客様が紙の本と電子書籍のどちらを選択するのかという自由を損なうものではない。そうではなくて、もともと電子化されていなければほとんど誰にもアクセスすることができなかったであろう情報不特定多数の手の届く範囲においたというだけの話。そしてその現実的方法たまたま電子化だったというだけ。

憤りを感じる必要はない。そんな暇があるなら、古書がどういうものなのかについてもっと反省的に考えるべき。古書を扱う人間がそんな素朴な価値観のもとで駄々をこねてどうするんだ。今のままだと、電子書籍の到来程度で揺らぐ価値しか古書に認めていなかったように、そしてまさにそれゆえに焦っているようにしか見えず、端的に言って見苦しい。

  • 「国立国会図書館はお気づきでしょうか」について http://anond.hatelabo.jp/20140318090122 古書の価格維持がされることが史料の保管・維持or埋もれた新資料が発見されるインセンティブになる...

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