高校の同級生に小説家志望がいたので、そういえば彼はどうなったのかと数年ぶりに名前を検索した。高校時代に何かの文学賞で賞を貰う程度には文才のある人間だったから、上手く行けばそろそろデビューしていてもおかしくないだろうなどと考えていた。もしこれで彼の名が書影やネット記事と共に華々しく紹介されていたら、ドヤ顔で周囲に自慢していたと思う。
グーグルの検索トップに出たのは、彼の本名が題された日記、というかnoteだった。
誰に向けて書いているのか、正直言って相当自分に酔った文章だった。本人の人となりを知っている身からすると笑える文だったけれど、つまらない日常を御大層に語っているだけなので、事情を知らなければただの自分語り乙で終わる。典型的なワナビだった。そんなものに数十ブクマがついていて、更には有料プランまで開設されている。つくづくネットサロンとは阿漕な商売と思った。立派な目標や感傷ばかりで結果が残せていなくても、ファンを囲い込めたら一定の反応は見込める。互助会かもしれないけど。
小説はあまり芳しい結果が残せていないようだった。自叙伝的な作品をフィクションという建前で公開していたので、読んでみた。事実に基づく部分の描写だけが妙に詳細なので、何だか笑ってしまった。
小説家になりたいとは言っていたけど、もはや小説を書くことを楽しんでいるのではなく、小説を通じて売名することが目的になっている印象を受けた。実際、即売会に出て小説を売っていたようだけど、派手なスペースで目立てば爆売れするという世界ではない。弱小サークルならそもそも手に取ってもらえないのに、彼の販売に対する意気込みはどうもズレているように感じた。自分は二次創作畑の人間なので、一次創作界隈だとまた事情は異なるのかもしれないが。
御託を並べる暇があったら短編でもいいから新作を書けばいいのに。
彼が日記に色々と書いていたおかげでどうでもいい情報ばかり知った。
てっきり慶應に入学したと思っていたのだが、知名度も微妙な謎大学に進学していたのは意外だった。悔しさを再三小説に滲ませるぐらいなら仮面浪人でもすればよかったんじゃ?