https://www.nikkei.com/article/DGXZQODF276MJ0X20C21A1000000
経団連の中西宏明会長は27日、連合の神津里季生会長とオンラインで会談し「日本の賃金水準がいつの間にか経済協力開発機構(OECD)の中で相当下位になっている」と語った。26日に開いた労使フォーラムによって2021年の春季労使交渉が始まり、連日で労使トップが意見を表明した。経団連は新型コロナウイルスの影響で一律の賃上げ方針は見送ったが、業績の堅調な企業には積極的な対応を求める。
徒に日本アゲをしたい訳ではないが、日本のGDPは先進国の中で〜位とか、こういう上のようなニュースを見ているとモヤっとするところがある。
日本の給与水準や物価が海外諸国と比べて安くなっているのは事実なのだが、実際にヨーロッパなどに旅行してみるとお世辞にも日本より治安が良いわけでもないしインフラや生活が快適なわけでもない。むしろ日本での暮らしが諸外国と比べても快適なのもまた事実だと思う。日本の給与や物価が低く抑えられているのは、為替の要因も大きいだろう。それはつまりここ30年くらい経済成長をして来られなかったツケでもある。
今から20年も前に東南アジアの発展途上国に行くと、物価が日本の1/3以下で小銭で豪遊できたのを思い出すが、一方でいまたとえばオーストラリアなどに旅行すると日本より物価が何倍も高いので目を剥くことになる。経済成長著しい諸外国から見て、今の日本の立場はむしろ20年前の東南アジアのように映るのだろう。しかし、インフラのまだまだ貧弱だった昔の東南アジアと、一度は世界一まで迫る経済発展をし今でも曲がりなりにも高い工業力を維持している日本とを同列に見ることには少し無理がある。良かった時代の残照とはいえ、日本がいまだにいくつかの分野で競争力をもった快適なハイテク国家であるのも事実だ。日本は一回りして今の位置にいるのだ。
思うのは、実はこうしたGDPや給与水準といった単一の経済貨幣による社会の豊かさの比較というのが、日本のような一回りして独自のポジションを築き上げた老成国家に対する物差しとして機能していないのではないかということ。だいたい世界の経済や教育の水準を測るスタンダードはイギリスのような標準規格作成大好き国家が自分たちが知っている範囲の狭いクオリアの中から作り出したもので、残念ながら日本をはじめ後発のアジア国家はそういったスタンダードに唯々諾々と甘んじている現状がある。
日本がもう一度世界の中で強いリーダーシップを示したいのなら、DVDなどの工業規格でそうしたように、日本の本当の良さを正当に評価できる新しい指標を提唱してそれを元にランキングを発表してみるべきだと思う。そういう新しい価値の提案というのも、日本のような老成国家の世界に対する責任の一つだろう。