【m3.com】医療計画、新興感染症への備えが欠落していた - 中川俊男・日医副会長に聞く
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厚生労働省の「地域医療構想に関するワーキンググループ」の構成員として議論を主導してきた、日本医師会副会長の中川俊男氏にお聞きした(2020年5月1日にインタビュー)。
――2009年の流行後、2013年には新型インフルエンザ等対策政府行動計画を策定しました。
法整備はしていたものの、その具体化まではしていなかった。また私自身の反省を込めて、地域医療構想の議論をしている際、新興感染症に対する医療提供体制の確保という視点が欠落していました。今後は、都道府県別に、地域の実情を踏まえ、新興感染症への対応を医療計画に含めるべきでしょう。医療計画の現在の「5疾病、5事業」に新興感染症を加えて、「5疾病、6事業」にすべきだと思っています。この点については、横倉(義武)会長とも話をしており、既に非公式に厚生労働省に打診をしており、何らかの機会に、日本医師会として正式に提案したい。
具体的には、新興感染症が発生した時に、病床や医療従事者の確保計画、人工呼吸器やECMOなどの医療機器、マスクをはじめとする個人防護具の備蓄計画などを都道府県ごとに立てる。こうしたことをきちんとやっておかないと、次なる備えができません。
「病床の確保」ですが、その候補となるのが(地域医療構想で具体的対応方針の再検討が求められた)424の公立・公的医療機関等。2019年9月に公表して、大変議論が白熱しましたが、「A」(急性期・高度急性期医療に関係する9領域の全てで「特に診療実績が少ない」とされた病院)に該当するなど、病床稼働率が低い公立・公的医療機関等、特に病棟単位で空いているケースは、そのまま空けておくのも一つの在り方ではないでしょうか。
これまで「空床を置いておくこと自体、もったいない」との議論もありました。しかし今、新型コロナの軽症患者等の宿泊療養に、ビジネスホテルを使っています。常に配管が使えるくらいのメンテナンスをしておけば、いざという時に使えるでしょう。
(略)
――地域医療構想では、「A」に該当した公立・公的医療機関等は、再編統合も視野に入れた具体的対応方針の再検証が求められています。
その時に、新興感染症が発生した時の備えを念頭に置いてもらいたいということです。
今は有事です。坪井会長(編集部注:1996年から2004年まで日本医師会会長を務めた坪井栄孝氏)は、「国民の安全保障」とは何かについて、「有事」は戦争ですが、「平時」は医療だと言っていました。
「国民の安全保障」をもっと踏み込んで「社会保障」について考えると、今は「有事」。「有事」に対する備えは、「平時」の余力、余裕、これが大事で、いざという時に対応できない。「平時」の時に、ギリギリの医療提供体制ではダメだということが、今回明確になりました。