2024-09-18

量子力学観測問題抽象化

量子力学観測問題抽象化された形で定式化する。

基本的な枠組み

まず、システム全体を含む複合系を考える。観測対象系、環境系、および観測者(意識)を含むヒルベルト空間 ℋ を次のように定義する。

ℋ = ℋ_S ⊗ ℋ_E ⊗ ℋ_O

系の状態密度演算子 ρ により記述され、全体の状態空間 ℋ 上の密度行列として表される。

エントロピー定義

エントロピーフォン・ノイマンエントロピーを用いて定義する。

S(ρ) = -Tr(ρ log ρ)

観測操作エントロピーの変化

観測によるエントロピーの低下

観測操作を完全に正定な(completely positive)トレース保存(trace-preserving)マップ ℳ として定義する。観測後の状態 ρ' = ℳ(ρ) において、エントロピーが減少することを条件1として反映する。

S(ρ') < S(ρ)

デコヒーレンスによるエントロピーの増大

デコヒーレンス操作を完全に正定トレース保存マップ 𝒟 として定義する。デコヒーレンス後の状態 ρ'' = 𝒟(ρ) において、エントロピーが増大することを条件2として反映する。

S(ρ'') > S(ρ)

ブランチの定式化

ヒルベルト空間 ℋ を無限分岐するブランチに分割する。各ブランチ観測結果に対応し、以下のように直交する部分空間に分解される。

ℋ_O = ⊕_(i ∈ I) ℋ_(O,i)

ここで、I は無限集合を表す。全体の状態は各ブランチ対応する部分空間に分解され、次の形で表される。

ρ = ∑_(i ∈ I) p_i ρ_(S,i) ⊗ ρ_(E,i) ⊗ ρ_(O,i)

観測者の知識ブランチ選択

観測者の知識状態

観測者の知識 K はヒルベルト空間 ℋ_O 上の状態として表され、重ね合わせの状態にある。

|Ψ_O⟩ = ∑_(i ∈ I) c_i |i⟩

ここで、|i⟩ は各ブランチ対応する基底状態、c_i は複素係数である

意識ブランチへの移行

観測操作 ℳ により、観測者の知識特定ブランチ j へ移行することを条件3および条件4として反映する。これを数学的に表現するために、観測操作 ℳ は次のような射影を含む。

ℳ(ρ) = ∑_(j ∈ I) P_j ρ P_j

ここで、P_j はブランチ j に対応する射影演算子である。この操作により、観測者は特定ブランチ j を「選択」し、そのブランチ対応する知識状態 |j⟩ を持つことになる。

知識の決定と分岐の方向

分岐の方向の無数性

ブランチの集合 I が無限であることにより、分岐の方向が無数に存在することを条件5として反映する。

観測者の知識の重ね合わせ

観測者の知識 |Ψ_O⟩ が全てのブランチに対して重ね合わせの状態にあることを条件6として反映する。つまり観測者は観測前に全てのブランチ可能性を持っており、観測後に特定ブランチに「意識が移行」する。

エントロピー変化の統合

観測操作 ℳ とデコヒーレンス操作 𝒟 を統合し、全体のダイナミクスを次のように定式化する。

ρ → 𝒟 → ρ'' → ℳ → ρ'

ここで、

最終的な数学的定式化

以上を総合すると、観測問題数学的定式化は以下のようになる。

1. 系の状態: 密度演算子 ρ がヒルベルト空間 ℋ = ℋ_S ⊗ ℋ_E ⊗ ℋ_O 上に存在する。

2. エントロピー: フォン・ノイマンエントロピー S(ρ) = -Tr(ρ log ρ) を用いる。

3. デコヒーレンス操作: 完全に正定トレース保存マップ 𝒟 により、エントロピーが増大 S(𝒟(ρ)) > S(ρ)。

4. 観測操作: 完全に正定トレース保存マップ ℳ により、エントロピーが減少 S(ℳ(ρ)) < S(ρ)。

5. ブランチ構造: 観測者のヒルベルト空間 ℋ_O を無限個の直交部分空間に分割 ℋ_O = ⊕_(i ∈ I) ℋ_(O,i)。

6. 観測者の知識: 観測者の知識状態 |Ψ_O⟩ = ∑_(i ∈ I) c_i |i⟩ が重ね合わせにある。

7. 意識の移行: 観測操作 ℳ により、観測者の意識特定ブランチ j に移行し、そのブランチ対応する知識状態 |j⟩ を持つ。

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