2024-08-22

[] 経済数学的複雑性

論文: https://www.ams.org/notices/199502/saari.pdf

この論文は、経済における価格調整プロセス数学的にどれほど複雑で予測困難であるかを示す複数定理を扱っている。以下は、論文に登場する主な定理とその数式の要約である

1. SMD定理 (Sonnenschein-Mantel-Debreu Theorem)

内容: SMD定理は、エージェントの数 a ≥ n であれば、価格シンプレックス上のどんな動的挙動再現できることを示している。これは、どのような複雑な振る舞いが選ばれたとしても、それを再現する過剰需要関数存在することを意味する。

Fε : [U × ℝ₊ⁿ]ᵃ → Ξε(n)

この結果は、アダム・スミスの「見えざる手」の物語数学的に保証されないことを示唆している[19:6][19:1]。

2. ブラウワーの不動点定理の応用

内容: 価格シンプレックス上のベクトル場 ξ(p) が価格均衡 p* を持つことを示す。

ξ(p*) = 0

この不動点は、供給需要が一致する価格である。この定理により、価格均衡の存在保証されるが、価格が均衡に向かって収束するかどうかは別問題である[19:12]。

3. 価格調整メカニズム一般方程式

内容: 価格動態は次のように表される。

p' = ξ(p)

その離散版では、次の式が使用される。

pₙ₊₁ = pₙ + hξ(pₙ)

このモデルは、価格調整がカオス的な挙動を示す可能性があることを示し、均衡価格への収束保証されないことを指摘している[19:11]。

4. 価格調整の不可能性に関する定理

内容: n ≥ 2 の場合、次のような一般化された価格メカニズム存在するが、それが常に収束することは保証されない:

pₙ₊₁ = pₙ + M(ξ(pₙ), ξ'(pₙ), …, ξ⁽ˢ⁾(pₙ))

任意の過剰需要関数初期条件において、収束しないケースが必然的存在する。したがって、普遍的価格調整メカニズムの実現は不可能であるとされている[19:0][19:3]。

まとめ

これらの定理は、経済モデルが持つ数学的複雑性と、均衡価格への収束保証されないことを示している。

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん