論文: https://www.ams.org/notices/199502/saari.pdf
この論文は、経済における価格調整プロセスが数学的にどれほど複雑で予測困難であるかを示す複数の定理を扱っている。以下は、論文に登場する主な定理とその数式の要約である。
内容: SMD定理は、エージェントの数 a ≥ n であれば、価格シンプレックス上のどんな動的挙動も再現できることを示している。これは、どのような複雑な振る舞いが選ばれたとしても、それを再現する過剰需要関数が存在することを意味する。
Fε : [U × ℝ₊ⁿ]ᵃ → Ξε(n)
この結果は、アダム・スミスの「見えざる手」の物語が数学的に保証されないことを示唆している[19:6][19:1]。
内容: 価格シンプレックス上のベクトル場 ξ(p) が価格均衡 p* を持つことを示す。
ξ(p*) = 0
この不動点は、供給と需要が一致する価格である。この定理により、価格均衡の存在が保証されるが、価格が均衡に向かって収束するかどうかは別問題である[19:12]。
内容: 価格動態は次のように表される。
p' = ξ(p)
その離散版では、次の式が使用される。
pₙ₊₁ = pₙ + hξ(pₙ)
このモデルは、価格調整がカオス的な挙動を示す可能性があることを示し、均衡価格への収束が保証されないことを指摘している[19:11]。
内容: n ≥ 2 の場合、次のような一般化された価格メカニズムは存在するが、それが常に収束することは保証されない:
pₙ₊₁ = pₙ + M(ξ(pₙ), ξ'(pₙ), …, ξ⁽ˢ⁾(pₙ))
任意の過剰需要関数や初期条件において、収束しないケースが必然的に存在する。したがって、普遍的な価格調整メカニズムの実現は不可能であるとされている[19:0][19:3]。