三十年前なんか、状態が「良」の本を買ったらどぶ川に捨ててあるような本が届いてさ。
濡れた後はあるわ、どぶ臭いわ、おまけに中にはネズミの死骸まで挟まってて、あれは本当にびっくりしたよ。
当然、返品しようと思って連絡したんだけど、受け付けてくれないんだ。
「こちらの不備ではありません。状態の説明には問題がありませんでした」と繰り返すばかり。それで、彼らは何を持ち出してきたと思う?スピノザの哲学さ。
「お客様、スピノザの『エチカ』をご存知ですか?彼は因果関係について詳しく述べています。私たちが提供した商品とその状態には、明確な因果関係があります。お客様が感じている不満は、商品の状態に対する誤謬によるものです。つまり、商品の状態が悪いというお客様の判断は、必ずしも我々の責任ではないのです」
俺はそれを聞いて、頭が真っ白になった。
スピノザ?哲学?なんでそんなことを持ち出してくるんだ?でも、相手の言葉は理屈が通っているように感じられた。
当時はスピノザが流行っていたから、俺も少しは知識があったんだ。
だから相手の言う因果関係の誤謬については納得せざるを得なかった。
スピノザによるとある事象が起きたとき、その原因は必ずしも直接的なものではない。
たとえば、どぶ臭い本が届いたのはAmazonのせいじゃなくて、その本がどぶに落ちた過去の出来事が原因だと。
それを今のAmazonに責任転嫁するのは因果関係の誤謬だって、俺はまんまと言いくるめられたわけだ。
でも、あれから30年。今のAmazonはそんなことない。商品の状態もちゃんと説明されていて、返品もスムーズに受け付けてくれる。安心してネットでの買い物ができるようになったのは、本当にありがたいことだと思う。
今の時代、ネットは物騒とか厄介とか、そういった話をよく聞くけど、それでも前よりはずっとマシだってことも知っておいていいんじゃないかと思うんだ。
30年前にAmazon無かっただろ、と思ったが30年前の1994年7月5日設立だったは