今更、バービー映画を見ました。あと批評サイトもいくつか読んだ。
時代遅れのフェミニズム映画だ、と言うことはさすがになくて、性別に限らず人種・体型・職業・疾患、さらには英語が喋れるかどうかにまで全般的に差別はいけないとする現代の(英米の)革新の流れをきちんと受け止めていると思いました。
ところで、そのように差別を解消していけば、元々は差別により恩恵を受けていた特権階層、例えばこの映画でいう金髪・碧眼で美人でグラマーな女性、つまりバービーが表す概念そのもの、はこれまで受けていた特権を剥奪されます。するとそのような過去の特権階級はこれまでより不幸になるのか。
そうではない、差別が解消され、個人が自分の思うように人生を選ぶことができるようになったとしても、人間は老いてゆき人生において必ずしもハッピーな感情ばかりあるわけではない、という点は変わりないが、そんな個人個人の人生は皆美しい、と肯定する、そんな人間讃歌の映画だと思いました。
つまり、これだけの革新思想に基づきながら、旧来的価値観であり保守的思想の権化であるとも取れるバービーを叩き潰そうとしない、否定しない、という着地点を取ったのが、私には心地よかったです。