2022-10-23

それは温かかった。

最近はいっそう寒くなってきました。

私は温かい飲み物が好きだ。

かい飲み物を飲むと、心も体もぽかぽかしてくるから

いつも彼が入れてくれるのは何の変哲もないただの緑茶で、でも私はそれが好き。

朝に入れてくれるお茶が好き。

夜に入れてくれるお茶が好き。

それは温かかった。いつも。

飲むと心も体も安らいだ。

お茶には殺菌作用があるからね。

そう言って彼は虫歯がまったくないことを自慢するように歯を見せ、私に微笑みかけた。

彼との出会い大学キャンパスで、私の友達とも仲が良くてよく三人で遊んだりしてた。

私の友達は私と違って明るくて、話していて楽しい子。

話題豊富で、気遣いも出来る。飲み会で、自然と取り分けたりしてくれる。そんな子だ。

彼女は言っていた。

増田もっと積極的であるべきだよ」と。

そうは言っても、人はそう簡単には変われない。

だったらそういうバイトでもしてみたら?と彼女が言うので私はそうすることにした。

接客業最初、大変だったけれど慣れると楽しい

常連のお客さんには私から声をかけられるようになるほどには、私は成長できた。

おかえりと言ってお茶を入れてくれる彼はいつもどおりで、でもバイトのせいで一緒に過ごす時間は短くなっていた。

ごめんね、と私が謝ると彼は「いいよ。増田が成長できるなら嬉しいし」と笑ってくれた。

私はお茶を飲み、ありがとうと言う。

友達である彼女は言っていた。

「私、また虫歯なっちゃって」

お茶は温かかった。そして、ずっと温かいままだと思ってた。

ある日、私がバイトから帰ると彼が居なかった。

少しして帰ってくるとちょっとした用事だったといい、私にお茶を入れてくれる。

それは温かかった。

数日後、だったと思う。たぶん。一週間後だったかもしれない。

彼が、歯が痛いと言ってきた。虫歯になったらしい。

人生初の虫歯。彼は痛がりながらも笑っていた。初体験、だと。

彼は歯医者に行ってくるよと出て行き、私は残されたものを見た。

それはまだ、温かかった。

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