2022-05-06

ざるそばを姪と一緒に食いに行った

俺は嫌だった。だって小学3年生の女の子を連れてる33歳のおっさんなんて完全に不審者じゃん。警察沙汰になる可能性すらある。

そもそも俺はそば屋が大嫌いなんだよ。そばじゃなくて、そば屋が嫌いなの。

でも妹がどうしても急用があるし、この日にざるそばを食べるって約束しちゃったから、とか言って姪を押し付けられた。

しゃーないから車に乗ってそこそこ高めの蕎麦屋に向かった。姪はキラキラした目で街を見て「ざるそばざるそば!」と連呼していた。

ここで釘を刺しておこうと思って、俺は言った。

「俺はな、そばは好きだけどそば屋は大嫌いなんだよ」

姪は不思議そうな顔をして俺のことを見つめてこう言った「なんで?」

大人になると色々嫌な思い出が積もるからね」

この文章を読んでいるのは大人だろうから言っておくと、俺の5年付き合っていた元カノそば屋勤務だった。ある日突然振られてそのまま音信不通それから俺はそば屋を見ると彼女のことを思い出して胸が痛くなるのだ。まあ、そう言うくだらない理由

姪は何やら察したようで、それ以上のことは追求しなかった。できた子供である

さて、そば屋について隅の席に座った。俺は元カノがいないかわず確認してしまった。いなかった。よかった。

ホッとしているところに店員さんが注文を取りに来て、姪が元気よく「ざるそば!」と言った。

店員さんはクスッと笑って「ざるそばね」なんて言って、めちゃくちゃ暖かい空気が流れた。どうも俺はこう言う空気が苦手だ。多分俺の精神を掘り返すに、俺自身家族を持たなかったことをコンプレックスとしているからではなかろうか。自己探索の旅に出かけボケっとしているところに店員さんが「お父さんは?」と聞いてきた。

お父さん。

そう見えるのか。なんだかそれは嫌な気分なはならなかった。というか、なんとなく救われた気がしたのだ。俺は自信をこめて言った。

ざるそばで」

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