2021-07-25

祖父の話

 祖父は今年で90歳。今月施設に入った。祖母は5年前に亡くなり、ずっと私の父親(私の両親は離婚しているので、父は図らずも離婚後は実家祖父母の面倒を見ながら暮らしていた)と二人で暮らしていた。

 祖父典型的な昔気質で、仕事仕事で家庭を顧みず子供たちと不仲だった。亡くなった祖母子供と結託していて、私の父と叔母と祖母でよく祖父文句を言い合っていた。

 祖父は外では愛想と面倒見がいい人で通っていて、趣味市民農園仲間や自治会の集まりには楽しそうに参加していた。一方で家庭内では部屋に引きこもり(というよりリビングから追い返されて)、食事自分一人で食べる生活だった。愛想もなく、こちらに何か話しかけてくることもなかった。

 私も父親を訪ねていけば祖父にも会うので、多少は話をしたりはしていたが、子供の頃に世話をされた記憶がないので、結局親戚の人程度の親しみしか湧かない。

 そんな祖父施設に入り、多分長らくは保たないと父から連絡があった。コロナ禍なので施設は面会もできない。もう会えないのか、と思ったが、不思議と焦燥はなかった。悲しみを想起する祖父との思い出も、逝かないで!と泣きたくなるような情緒的な交流もなかったから、まあそうなんだろう。

 我ながら随分冷たいなとも思うが、血縁関係があるからと言って好きになったり大事になるわけではなくて、交流や思い出があるから愛着が湧くのもまた事実だと思う。

 祖父死ぬ。私は死に目に会えない。でも、それについて「そうなんだ」以上の感情が湧かないことそれ自体けが、悲しい。

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん